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カルテル疑惑で揺れる人材派遣業界 法施行40年で見えた「誤解だらけの実像」と残された宿題働き方の見取り図(1/3 ページ)

» 2026年06月05日 07時00分 公開
[川上敬太郎ITmedia]

 派遣料金の改定を巡るカルテルの疑いで、大手派遣事業者5社に公正取引委員会の立ち入り検査が入ったと報じられました。事実であれば、深刻な違法行為です。

 労働者派遣法が施行されて7月で40年が経ちます。多くの人の記憶に強く残っているのは、リーマンショック直後に設置された「年越し派遣村」や「派遣切り報道」の印象かもしれません。厳しい雇用環境の中、労働者派遣に対する認識は不安定な働き方の代名詞のようでした。

 また、2015年の労働者派遣法改正により、会社側は手続きを経れば、派遣社員を3年以内に入れ替えることで、無期限で同じ業務での派遣サービスを利用できるようになりました。これを受けて、職場は派遣社員ばかりになって「正社員がゼロになる」という主張さえありました。

 雇用破壊の元凶のように見られてきた労働者派遣。法施行から40年が経ち、直近ではカルテル疑惑で業界が揺れる中、労働者派遣の現在地とこれからについて考えてみたいと思います。

photo01 労働者派遣が抱える課題と現在地を探る(画像提供:ゲッティイメージズ)

著者プロフィール:川上敬太郎(かわかみ・けいたろう)

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ワークスタイル研究家/しゅふJOB総研 研究顧問/4児の父・兼業主夫

愛知大学文学部卒業。雇用労働分野に20年以上携わり、人材サービス企業、業界専門誌『月刊人材ビジネス』他で事業責任者・経営企画・人事・広報部門等の役員・管理職を歴任。

所長として立ち上げた調査機関『しゅふJOB総研』では、仕事と家庭の両立を希望する主婦・主夫層を中心にのべ5万人以上の声をレポート。

NHK「あさイチ」「クローズアップ現代」他メディア出演多数。


カルテル疑惑で注目される「マージン率」の実態

 カルテル疑惑で取り沙汰されているのは、料金改定時に派遣事業者が派遣先に請求する派遣料金を引き上げ、派遣社員に支払う時給との差額に相当するマージン率を高めた可能性です。さらには、増えたマージンを派遣社員の賃上げに十分反映せず、自社利益の確保を優先していたのではないかとの疑念も生じています。

 労働者派遣のマージン率は、30%程度が相場とされます。それが全て派遣事業者の利益になっていると受け止められることがありますが、実際には誤解です。日本人材派遣協会のWebサイトに掲載されている「派遣料金の構造」によると、30%の内訳は、社会保険料10.9%、有給休暇費用4.2%、諸経費13.7%で、残る約1.2%が営業利益に相当します。

 諸経費とは、募集広告費用やシステム運用費、家賃、営業社員の人件費など、他事業と同様に運営に必要なコストを指します。

 検査が入った派遣事業者各社は、全面的に協力する姿勢を示しています。カルテルが事実なのかはもちろん、それが派遣社員の賃上げに反映されていたのかどうかなど、実態の解明が待たれます。

「派遣社員の急増」は本当か データで見る労働者派遣への誤解

 マージン率の内訳に限らず、労働者派遣は実像が見えにくく誤解の多い業界です。最大の誤解は、雇用者全体に占める比率かもしれません。

 雇用者の種類は、正社員と呼ばれる雇用形態とそれ以外の非正規社員に大きく二分されます。非正規社員は有期雇用のケースが多く、不安定であるとよく問題視されます。

 総務省の「労働力調査」によると、直近2025年の正社員比率は、役員を除く雇用者全体の63.5%でした。一方の非正規社員は36.5%ですが、そのほとんどが派遣社員であるかのような誤解があり「労働者派遣の解禁で非正規社員が増えた」という言説をよく耳にします。

 労働者派遣法が施行される以前、現在の定義による派遣社員は統計上「ゼロ」という扱いでした。それが2025年には156万人となったので、派遣社員が増えたのは間違いありません。しかし、同年の非正規社員の総数は2128万人です。主婦や学生などを中心とするパート・アルバイトが1512万人で、非正規社員全体の71.1%を占めています。派遣社員の比率は非正規社員の7.3%に過ぎません。全雇用者に占める割合だと2.7%です。

 労働者派遣法の2015年改正で「正社員がゼロになる」といった主張が広がりましたが、正社員が全て派遣社員に置き換わることは現実的ではないでしょう。それどころか、法改正から10年が経った今、正社員の数は383万人も増えました。

 派遣社員比率は長年にわたり2〜3%の間で推移しており、市場規模は一定の水準で安定していると見ることもできます。

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