さらに見過ごせないのが、AIの急速な台頭だ。
「言われた仕事しかこなさない」といった静かな退職の典型的な働き方は、まさにAIが最も得意とする領域だ。定型的・反復的な業務処理、情報の整理と要約、決まったフォーマットでの報告書作成。こうした業務はすでに、AIが人間より速く、安く、正確にこなし始めている。
給料分しか働かないと宣言した瞬間、その人はAIとのコスト競争に参加したことになる。そしてその競争に、私たち人間は勝てるのだろうか。AIを本気で使っている人ほど、強く危機意識を持っていると思う。
何よりも怖いのは、AIは疲れず、不満も言わず、静かな退職もしないことだ。
結局のところ「給料分」働くためには、依頼された仕事をこなすだけではダメで、常に創意工夫を続けることが重要だ。
では、創意工夫する力はどうやって身につけるのか。最後にこれを解説したい。
創意工夫には「質問」が必要だ。目の前の問題をぼんやりと眺めるのではなく、切り口を変えながら問い続けること。そうすることで、初めて本質が見えてくる。
これには、安岡正篤氏の「思考の3原則」が参考になる。
この3つの視点で自問自答するクセをつけることだ。
例えば「売り上げが伸びない」という問題に直面したとする。「どうしたらいいんだろう……」と悩んでいても何も変わらない。ここで3つの視点から問いかけてみる。
まず長期的な視点だ。
「この問題はいつから続いているのか」
「5年後も同じことが続いたらどうなるか」
このように時間軸で考えると、問題の深刻さと変化の必要性が浮かび上がる。
次に多面的な視点だ。
「競合他社から見たらどう映るか」
「お客さま側から見たら何が足りないのか」
「他部署から見たら何が問題に見えているか」
このように、自分の立ち位置だけで考えていると、見えない景色がある。だから別の視点を利用して”問い”を立ててみる。
そして最後に、本質的な視点だ。
「そもそも、何のためにやっているのか」
「本来の目的は何だったのか」
日々の業務に追われていると、この問いがおろそかになりやすい。だから、たまに立ち止まってこのような自問自答をしてみよう。
「給料分」のボーダーラインが上がり続ける時代に、創意工夫ができる人とできない人の差はドンドン広がっている。静かな退職者が「言われたことをこなす」だけで止まっているとしたら、それはこの問いかけをやめているからに違いない。
静かな退職を続ける部下に、この現実を丁寧に伝えること。それが、管理職の大切な仕事の一つではないか。
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