本論:AIエージェントの台頭とグルメサイトの危機
このように、一見AIに代替されそうなシステム開発業界が構造転換によって生き残る道を模索できる一方で、より深刻な文字通りの「存在意義の危機」に直面しそうな業界も少なくない。特に筆者が「どうするつもりだろう?」と老婆心ながら心配しているのが、これまで外食インフラの王者として君臨してきた「グルメサイト」の未来である。
なぜなら、現在のユーザーがグルメサイトを利用する動機の大部分は、極めて明確かつ定型的な「条件検索」に終始しているからだ。ユーザーの利用動機を言語化すれば、次のようなものだろう。
「××駅近くで、〇月〇日の〇時〇〇分頃から人数×人で予約できて、一人当たり〇〇円前後で、××××(接待、デート、女子会など)用にユーザー評価が高い、〇〇系の店」
ユーザーが本当に求めているのは、この複雑な条件に合致する店舗を「最速で見つけること」に他ならない。
このニーズに対して、現在のグルメサイトのユーザー体験は決して理想的とは言えない。いくつもの検索タブを切り替え、広告枠として最上位に表示される店をスキップし、真偽の定かではないレビューの点数を比較し、最終的に「あれ? 満席でうまく予約が出てこない」と、30分以上も画面とにらめっこして悪戦苦闘する。その挙句、時間切れになって(またはホトホト嫌になって)大して意に沿わない店で妥協する――。
こうした実情に対し、すでに市場ではグルメサイトの地盤沈下を予感させる「脅威」が芽生え始めている。情報感度の高い若者たちの間では、すでにChatGPTやGeminiなどの生成AIを使ったお店探しが日常化しつつあるのだ。
確かに現状では、まだ飲食店側の情報提供体制が追いついていない。独自のホームページを持っていなかったり、グルメサイトへの情報掲載だけで手一杯になっていたりするため、AIがネット上から拾えるデータには限界がある。そのため、現時点のAIによる店舗提案は、必ずしも満足のいく精緻な情報に達していないことも少なくない。
しかし驚くべきは、若者たちがそれを承知の上で、「グルメサイトで何十分も探す手間に比べれば、タイパ(タイムパフォーマンス)を考えてこれで十分」と割り切って使いこなしている点である。これは、ユーザー側のマインドシフトが、グルメサイト側の想定を遥かに超えるスピードで進んでいることを意味する。
先に挙げたような不毛な体験を強いられるくらいなら、多少の不正確さには目を瞑っても、AIとチャットする方が合理的だと消費者が見なし始めているのだ。
現状の「発展途上のAI」でさえこの状態である。今後、ユーザーの文脈を完全に理解し、自律的に動く「AIエージェント」が本格的に普及したらどうなるか。
まともなAIエージェントであれば、前述したような複雑な情報の組み合わせをインターネット全体から10秒以内に、しかも極めて正確に収集・精査し、ユーザーの好みに応じたお薦め順で提示することなど、いとも簡単にやってのけるだろう。店舗のリアルタイムの空席状況をAPIやウェブスクレイピングで確認し、最適なルートも含めてチャット画面一枚で提案・予約まで完結させる世界だ。
こうなれば、ユーザーがわざわざ特定のグルメサイトにアクセスし、広告まみれのページをスクロールしながら悪戦苦闘していた事態は、急速に「昔話」へと変わっていくだろう。
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