もちろん、打つ手がないわけではない。渡辺氏はロールプレイを勧めており、「オフィスを歩きながら、ここでこれを写したら何が起きるかを考えさせることが有効だ」としている。小林氏は、ルールの浸透状況を把握する方法として、規定を周知した上で、社員の閲覧状況を可視化し、未読者への再周知を行う運用が必要だと述べている。いずれも、社員の意識を向上させ、規定を現場に浸透させる、地道な手段である。
ただ見落とされやすいが、同じ「記録」でも誰の手にあるかで、全く違う名前で呼ばれる。
金融分野の実務指針では、前述の持ち込みの「制限」に加え、その対極とも言える措置が追加されている。会社が職場をカメラで撮影し、記録・監視することに対する「許可」だ。つまり、同じ指針の中で、社員の記録は制限し、会社の記録は安全管理の手段として認めているのである。
先に触れたAI議事録も、会社による記録だ。個人のスマホによる撮影や投稿と違うのは、「誰が、何の目的で、どの範囲を、どの権限とルールの下で記録しているか」が明確で、会社が主導している点だ。
AIの活用が急速に進み、撮影や録音といった記録が当たり前になっていく流れは止めることはできない。こうした状況下で重要なのは、記録自体を「制限」することではなく、目的や対象を考え、記録を適切に「管理」しようとする姿勢なのかもしれない。
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