契約業務系のリーガルテックは大きく2つに分けられる。締結前に契約書をチェックする「契約レビュー」と、締結した契約書を保管・活用する「契約管理」だ。このうち、契約レビューは生成AIの影響が早期に表れたSaaS領域の一つだ。
生成AIにより契約レビューの市場が揺らぐ中、契約管理を手掛けるSansanの「Contract One」は、売り上げを前年同期比で約2倍に伸ばしている。同じリーガルテックである、契約レビューと契約管理の明暗を分けた線は、どこにあるのか。
AI契約レビューを提供するGVA TECH(東京都港区)は、2025年12月期決算で踏み込んだ説明をした。「レビュー機能を単体で利用していた一部の中小企業で解約が増えた。汎用の生成AIから代替圧力を受け、機能の価値が相対的に低下したためだ」という内容だ。
GVA TECHは機能提供型のSaaSから、法務業務全体を設計する「法務AX」へと事業モデルを切り替えつつある。2026年12月期第1四半期のLegalTech SaaS事業の年間経常収益(ARR)は前年同期比22.1%増で、構造転換は数字に表れ始めている。
対するSansanのContract Oneは違う動き方をしている。直近四半期の売上高は前年同期比101.9%増、契約件数は前年同期末比102.2%増の653件。ARRも2026年3月末時点で10億円を超えた。契約データベースを中核にした取引管理サービスとして、驚異的な伸びを示している。
Contract Oneの中核は管理側にある。締結済みの契約書や取引書類をデータ化し、一元管理・活用できる契約データベースを構築するのが本筋だ。
だが、契約管理の領域でContract Oneが最初から市場をリードしていたわけではない。先行したのは、LegalOn Technologies(東京都渋谷区)が提供するAI契約管理システム「LegalForceキャビネ」で、市場ではContract Oneを後発と見る向きもあった。
後から伸びた理由について、Contract Oneを率いるSansan執行役員の尾花政篤氏は、プロダクトのタグラインの影響を指摘する。
「AI契約データベースが利益を守る」(尾花氏)──受け取った契約書を一元化するだけで終わらせず、データベースとして使えるところまで作り込み、業務工数の削減、法対応コストの最適化、業界ごとの取引条件の見直しといった利益追求に直接結び付ける。尾花氏はそこまで意味付けを深めた点が他サービスと違ったと話す。「他社が歩んだ道を後ろから追いかけることは絶対にしない」というSansanの社風が、領域を掘り続けることを支えてきた。
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