なぜマクドナルドは「値上げ」しても「客離れ」が起きないのか 物価高時代に学ぶべきヒント(4/4 ページ)

» 2026年06月23日 05時00分 公開
[佐久間 俊一ITmedia]
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小売り・サービスを含めて「お手本」となる経営戦略だ

 販促にも特徴があります。日本マクドナルドの広告宣伝費および販売促進費は、2021年度の75億円から2025年度には81億円へと増加しています。しかし売り上げに占める割合では、2.4% → 2.0%へ低下しています。つまり広告効率が改善しているのです。

 マクドナルドの広告は商品が主役です。タレントは登場しますが、あくまで商品を魅力的に伝えるための存在です。世の中にはタレントばかり記憶に残り、何の商品だったか思い出せない広告も少なくありません。しかしマクドナルドは、商品のおいしさや魅力を伝えることに集中しています。

 本稿の内容をまとめると、マクドナルドの成功要因は単なる「値上げ」ではありません。商品施策で新たな需要を創出し、顧客を獲得し、価格施策で適正な利益を確保し、チャネル施策で利用機会を増やし、販促施策で商品価値を伝える。その結果、客数・客単価・売り上げ・利益が伸びるという好循環が生まれています。

 出店によって売り上げの規模を追うのではなく、既存店で新たなターゲットを開拓し、顧客のウォレットシェアを高める。そして値上げを実施しても顧客離反を起こさず、利益率まで向上させる。マクドナルドの好調は、値上げ成功の物語ではありません。

 商品・価格・チャネル・販促を統合的に運用し、既存店の価値を最大化する経営のお手本となるモデルです。その考え方は、外食産業だけでなく、小売業やサービス業を含め、多くの企業にとって参考になるのではないでしょうか。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

著者プロフィール

佐久間俊一(さくま しゅんいち)

レノン株式会社 代表取締役 CEO

城北宣広株式会社(広告業)社外取締役

著書に「小売業DX成功と失敗」(同文館出版)などがある。

グローバル総合コンサルファームであるKPMGコンサルティングにて小売企業を担当するセクターのディレクターとして大手小売企業の制度改革、マーケティングシステム構築などDX領域のコンサルティングを多数経験。世界三大戦略コンサルファームとも言われている、ベイン・アンド・カンパニーにおいて2020年より小売業・消費財メーカー担当メンバーとして大手小売企業の戦略構築支援及びコロナ後の市場総括を手掛ける。2021年より上場会社インサイト(広告業)のCMO(Chief Marketing Officer)執行役員に就任。

2022年3月小売業と消費財メーカーの戦略とテクノロジーを専門にコンサルティングするレノン株式会社を設立。

2019年より1年半に渡って日経流通新聞にコーナーを持ち連載を担当するなど小売業には約20年間携わってきたことで高い専門性を有する。

日経MJフォーラム、KPMGフォーラムなど講演実績は累計100回以上。


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