こうなると、freeeはAIにデータを差し出すだけのAPIやMCPを提供するだけの存在ではない。会計分野の知見と証跡データを持つことで、汎用AIエージェントでは精度が安定せず、推論コストも高くなりがちな業務を効率的にこなせるようになる。生の取引データだけを渡されても、汎用AIモデルは適切な判断が難しい。
だが「未回収リスクの高い順に請求書を抽出せよ」といった指示まで会計プラットフォームがこなせるなら、わざわざ呼び出す価値があるというわけだ。データを囲い込むことではなく、文脈を踏まえて加工・返却する能力を、freeeは武器に変えようとしている。
佐々木大輔CEOは基調講演で、AIによる働き方の変化は「人手確保が大変な日本のスモールビジネスにとって大きな機会になる」と語った。freeeの創業時の社名は「CFO株式会社」。AIがCFOのように振る舞うサービスを作る――それが原点だったという裏返せば、佐々木大輔CEOが掲げた「自由な経営」という理想も、見え方が変わる。自動化、リアルタイム、セグメント別、全員参加。人間が雑務から解放され、経営に集中できるという理想の裏で、freee自身は人間から直接選ばれる存在であることを、静かにやめようとしている。
むろん従来のUIを捨てるわけではない。佐々木CEOは、これまで通りの画面も使えるし、エージェントはそれとは別のレイヤーで動作すると説明した。むしろ、3層のうち上位2層であるカスタムオーダーとAIアシスタントでは、freee自身がエージェントのUIとオーケストレーション(複数のAIや業務の連携制御)を握り、個社向けの開発まで引き受ける。
外部AIに呼ばれる裏方に徹するのではなく、自前のエージェントを正面に立てる道も同時に開けている。両にらみの戦略だ。それでも、価値の重心が人間による操作からAIによる呼び出しへ移ることは、D4Uという旗印そのものが示している。下位レイヤーでは主役の座を譲り、上位レイヤーでは新たな主役を立てる。降伏に見えて、これは攻めの方向転換だ。
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