館内には「Brewing is Art & Science」という展示スペースもある。ビールの種類や副原料を紹介するパネル、約500冊のビール関連書籍、ホップの香りを当てるゲームなど、「飲む前にビールについて少し知る」ための仕掛けがあちこちに用意されている。
さらに気になるのが、オリジナル缶づくりだ。好きなラベルを選び、ペンやシールで自由にデザインできる。最後は、実際に醸造所で使われている巻締め機で、自分の手で缶にふたをする。飲み終わればなくなるビールではなく、「そこで過ごした時間」そのものを持ち帰れるような体験になっている。
外へ出ると、雰囲気はさらに変わる。芝生やハーブに囲まれた「プッハーガーデン」にはテラス席が並び、週末にはキッチンカーが出店する。米国発のゲーム「コーンホール」(ボードの穴を狙って袋を投げ、得点を競う)も用意し、来場者が長く滞在したくなる空間をつくっている。
それにしても、なぜここまで「ただビールを飲むだけではない場所づくり」にこだわったのか。きっかけは、泉佐野市から持ちかけられた誘致の話だった。
大阪府南部にある泉佐野市には、関西国際空港がある。海外からの玄関口として多くの人が行き交う街だが、コロナ禍に空港利用者が大きく減り、周辺地域のにぎわいも失われつつあった。
そこで泉佐野市が目を向けたのが、空港を利用する人を待つだけではなく、「わざわざ足を運びたくなる目的地」をつくることだった。その候補として声をかけたのが、ヤッホーブルーイングだった。
2021年に始まった「大阪ブルワリー(仮称)創造プロジェクト」は、泉佐野市の「#ふるさと納税3.0」を活用したもの。単にビールをつくる施設ではなく、醸造の様子を見たり、できたてのビールを楽しんだりできる、地域の新たな拠点を目指した。
ヤッホーブルーイングの井手直行社長は、コロナ禍に関西国際空港で目にした光景が強く印象に残っているという。「フロアに人が2人しかいなかった。お店にもお客さんがいない。大変な状況だった」。
人の流れが止まった空港を目の当たりにした経験もあり、「ビールをつくって売るだけでなく、ビールを通じて地域そのものを盛り上げられないか」と考えるようになった。
そのためには、単にビールを製造する場所ではなく、人が集まり、楽しみながら地域ににぎわいを生む仕組みが必要だった。
今回の施設は、ビールをつくって販売するだけの場所ではない。ここでつくったビールは、泉佐野市のふるさと納税の返礼品にもなる。有料の見学ツアーやグッズ販売に加え、将来的には会議や結婚式、ファンイベントなど、施設を活用した収益も見込んでいる。
年間来場者数は7万人を目標に掲げる。当面は金・土・日曜日の営業だが、今後は営業日を増やしていく予定だ。
売れる自販機は「1台」で考えない JR東日本の駅ナカで育った“商圏”のヒミツ
なぜ「皮だけ」「ガリだけ」が売れるのか 販売データで見えたドンキ「偏愛めし」の買われ方
焼肉店はなぜ急に苦しくなった? ロピアの急成長で見えてきた「新たな競合」
丸亀製麺は“讃岐うどん”の看板を下ろしたほうがいい、これだけの理由Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング