通勤負担の軽減による生産性向上が期待され、コロナ禍以降、多くの企業で導入されたリモートワークも「社員は自宅で仕事をしていてもサボらない」という考えを前提にした「性善説に基づくシステム」だが、残念ながらセルフレジと同様、十分に機能しなくなっている。リモートワークに関する複数の調査では、65〜80%という高い割合の人が「サボったことがある」と回答しているからだ。
ただ、この結果も、セルフレジと同様、ある程度予想されていたことだ。日本よりも早くリモートワークが普及していた米国でも、このような調査が相次いでいた。例えば、全米経済研究所(NBER)の調査でも、リモートワーカーの生産性はオフィスワーカーより18%低いという結果が出ている。テスラのイーロン・マスク氏が「リモートワーク=サボっている」と公言して物議を呼んだのも記憶に新しいだろう。
その結果、欧米企業の間では2023年ごろから「出社回帰」のトレンドが強まり、Amazon、Google、Appleなどがリモートワークの縮小・廃止を決定。中には「出社義務化」を宣言し、リモートワークに慣れた社員から不満が噴出し、労使が対立するケースもある。
こうしたビジネストレンドは、いずれ日本にも広がる。GMOインターネットグループは7月13日付で、これまでグループとして推奨してきた週1日の在宅勤務を廃止。熊谷正寿代表はSNSで、在宅勤務中のPCのタイピング数などを分析した社内データを基にを踏まえ、「トータルで在宅勤務はマイナス」と判断したとして、「負ける要素は排除する」と投稿し、話題を集めた。
その後、熊谷代表は、この投稿が誤解を招いたとして謝罪した。真意は「オフィス価値の再定義」にあるとし、育児や介護、病気などの事情がある社員は、引き続き在宅勤務を選択できると説明している。
さて、このような話を聞くと「私はフルリモートだけど、これまで一度たりともサボったことなどないし、会社から求められている以上の成果も出しているぞ!」とムキになって反論する人もいらっしゃるだろうが、そのように「マジメな人が報われない」というのも「性善説に基づくシステム」の大きな弱点だ。
セルフレジは大多数の客が適切に会計を済ませ、問題なく運用されている。しかし、ほんの一握りの人が万引きという違法行為に手を染めてしまう。それがチリも積もればで大きな被害となって、スーパーの経営を苦しめる。
リモートワークも同様で、大多数の社員は自宅でも真面目に仕事をしている。短時間のネット閲覧などで息抜きをする程度だろう。しかし、ほんの一握りの人が「がっつりと仕事を怠る」ケースもある。上司に見られていないことをいいことに、昼寝をしたり、Netflixを視聴したり、職務を怠るケースもある。それが積み重なれば大きな生産性低下に結びついて、会社に損害を与えてしまう。
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