なぜ「性善説」は機能しないのか セルフレジ、リモートワーク、消費減税の共通点スピン経済の歩き方(3/6 ページ)

» 2026年07月22日 08時48分 公開
[窪田順生ITmedia]

「つじつま合わせ仮説」

 「一握りの不届き者のせいで全体が迷惑を被るなんて、納得がいかない」という人も多いだろうが、セルフレジで万引きをしたり、リモートワーク中に働いているふりをしたりするような、「ズルやごまかしによって不当に利益を得ようとする行為」こそが、人間の本性だと指摘する専門家もいる。

 『予想どおりに不合理―行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」―』(早川書房)、『不合理だからすべてがうまくいく―行動経済学で「人を動かす」』(早川書房)など、世界的ベストセラーの著者で知られる行動経済学者のダン・アリエリー氏だ。

 『ずる――嘘とごまかしの行動経済学』(早川書房)の中で、アリエリー氏は「不正」に関するさまざまな調査や実験を行った結果、多くの人は、不正をする機会を与えられると、「ほんの少しだけ」のズルやごまかしをする傾向があることを明らかにし、「つじつま合わせ仮説」と名付けている。

「この人間的能力のおかげで、わたしたちはほんのちょっとだけごまかしをする分には、ごまかしから利益を得ながら、自分は素晴らしい人間だと思い続けることができるのだ。この両者のバランスを取ろうとする行為こそが、自分を正当化するプロセスであり、私たちが『つじつま合わせ仮説』と名付けたものの根幹なのだ」(『ずる――嘘とごまかしの行動経済学』早川書房)

『ずる――嘘とごまかしの行動経済学』(出典:Amazon

 つまり、わざと遠回りをして運賃を水増しするタクシー運転手も、手当たり次第に電話をかけ、高額なインターネット回線を強引に契約させる営業担当者も、同僚のアイデアを盗用して、さも自分が考えたことのように企画書を作ってプレゼンする営業担当者も、この「自己正当化のプロセス」によって、ズルやごまかしをしても自分を「善人」だと思い続けられるという。

 「そんな人間はサイコパスだ」と一笑に付す人も多いだろうが、アリエリー氏が指摘する「善人でも、不正をする機会があればズルやごまかしをする」という傾向は、日本の法人税を巡る実態からもうかがえる。

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