セルフレジもリモートワークも申告納税制度も、人間の二面性を前提としていない。「人間は常に理性的で正しい行動を取る」という考え方に依存しているため、制度がうまく機能せず、期待した効果を得られないのである。
こういう「現実」を踏まえると、高市政権がゴリ押ししている「食料品を対象とした2年間限定の消費税減税」も、期待した効果を得られない可能性が高い。
減税政策も「税金が減った恩恵を受けた人や企業が、減税分を消費や投資に回して国全体の経済が活性化する」という具合に、「人間は常に理性的で正しい行動を取る」という、単純な性善説に基づいているからだ。
今の日本は円安の影響で国民生活が厳しくなり、消費者人口も減少するなど弱りきっている。そういう国で生きる人々は減税分で得たカネを気前よく消費や投資に回すだろうか。自分のため、家族のため、社員のためということで、2年後の増税を見据えて「貯蓄」に回すというのは容易に想像できよう。
実際、コロナ禍で休業を余儀なくされた事業者に対し、政府は従業員の生活保障や休業補償を目的に補助金を支給したものの、その多くは労働者のもとに届くことなく、企業側にとどまり、運転資金に回された。これも「経営者にカネを渡せば、従業員に配ってくれるはずだ」という「性善説に基づくシステム」なので機能しなかった。
消費減税によって一時的にスーパーが活況となり、バラマキと同じく瞬間風速的には「減税特需」なんて感じで盛り上がるかもしれない。
しかし、財源なき積極財政は「円」の信用を低下させるので円安が進行し、結果として家計への負担がさらに重くなる可能性がある。減税による恩恵が貯蓄に回れば、消費は活性化されない。これまで実施してきた10万円の給付金などとそれほど変わらず、日本経済に大きな影響はない。コロナ禍では、欧州の一部の国で付加価値税(VAT)が一時的に引き下げられたが、経済政策としてはほとんど効果がなかった。それと同じだ。
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