最後に、関根氏は「銭湯を残したい」と思う理由を以下のように話した。
「年がかなり離れた父と私を、豊島区の銭湯だけは一切差別せずに受け入れてくれました。あの空間だけは、私にとってすごく居心地が良かったんです。『お風呂の中みたいに温かい社会になればいいのに』と、本当に思います。社会をそのまま受容できるような場所を残していきたいです」
この思いを実現するために、関根氏が選んだのは、短期間で成果を求めるのではなく、日々の営業を積み重ねる道だった。
「文化を根付かせるのに早送りはできません。最初の10年は、本当のスタートラインに立つまでの準備期間です。毎日営業して、お客さんにいい気持ちになって帰ってもらう。その体験を、ただひたすら作り続けたいと思っています」
スタートアップでは、短期間で事業を成長させ、大きな成果を生み出すことが求められる。一方で、銭湯という文化は、一朝一夕では育たない。毎日暖簾(のれん)を掲げ、湯を沸かし、お客を迎えるという営みを積み重ねた先でしか根付かない。
ビジネスの最前線から、斜陽産業とも呼ばれる銭湯の世界へ――。関根氏が挑んでいるのは、単に一つの銭湯を経営することではない。100年後も「日常」として銭湯が残る社会を信じ、その時間軸で挑戦を続けることなのである。
コンビニの25倍も売れる コカ・コーラも期待するドリンクが「銭湯」を主戦場に選んだ真意
中小企業は「消去法」で50代を採用する 早期退職の前に知るべき現実
退職一時金を「廃止」する会社は増えるのか 優秀人材が逃げる給与シフトの成否
病院内のカフェ、なぜ「タリーズ」が多い? 100店舗展開を支える運営戦略
シンガポールのドンキで飛ぶように売れる 1パック2000円の「日本産イチゴ」を支える技術とビジネスモデルとはCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング