だが、これは現場の暴走でも“バグ”でもなかった。週刊女性PRIMEがくら寿司広報に取材した記事によると、「得々ゾーン」という正規のサービスだという。
仕込みすぎたネタや、注文後にキャンセルが出た商品などを、115円(店舗によって変動)で回転レーンに流す取り組みだ。全店舗で導入しているが、提供する品や時間は決まっておらず、あえて大々的な宣伝はしていない。
食材廃棄を最小限にしつつ、客にもお得だと感じてもらえる価格で提供する。ふたを開けてみれば、くら寿司の取り組みはスーパーの「見切り品」や「おつとめ品」で見られるような、ごくありふれた合理的な対応だったのだ。
しかし、このサービスを知らなかった人には「不公平さ」を感じさせたり、「店側がこっそり行う特別サービスをなぜSNSで晒すのか」といった反感を買う結果になってしまった。あえて大々的にアピールしてこなかった「粋な配慮」が、SNS時代においては予期せぬ炎上の火種になってしまったのだ。
事態の真偽が判明したとはいえ、こうした事案が起きると「トラブルになるくらいならマニュアルにないサービスは全て禁じるべきだ」、あるいは「サービスが存在するならもっと全面的にアピールするべきだ」という極端な議論になりがちだ。
サービスの解釈が顧客に委ねられているからこそズレが生じる。それならば、最初から解釈の余地がないほど“厳格な運用”に落とし込めばトラブルは防げるという考え方だ。
だが、それでは少し惜しい。細かく明示されていないサービスには、店の「粋」や「宝探しのようなワクワク感」を演出し、ブランド価値を高める側面があるからだ。また、イレギュラーで生まれる商品ゆえに安定供給も難しい。“裏メニュー”だからこその利点も確かに存在するのだ。
そうであるなら、現代の企業に求められるのは、「SNSで誤解を含めてひとり歩きすること」を前提に、その“粋”をどこまで緻密に設計できるかだ。同時に、拡散された後の迅速な情報コントロールも欠かせない。今回、くら寿司が「得々ゾーン」という正式名称を早々に明かしたことは、沈静化に向けた非常に有効な一手だったといえる。
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