では、心理的安全性はどのように測るべきなのか。筆者が提案したいのは、以下の3つの見方だ。
心理的安全性が高まったかを判断する上で重要な視点になるのが、「従業員が黙らなくなったかどうか」だ。
エドモンドソンの心理的安全性の尺度には、「ミスをすると責められる」「他のメンバーと異なるという理由で拒絶される」「助けを求めにくい」といった項目が含まれている。裏を返せば、ミスや異論、困りごとを隠さずに口にできるかどうかを見ることで、心理的安全性の状態を測ることができる。
前述のように、平均値だけを見てしまうと、心理的安全性が著しく低い人を見逃してしまう。データを見る場合は、チーム別、職位別、雇用形態別、勤続年数別などに分けて見ることで、どの層の心理的安全性が低くなっているのかを把握しやすくなる。
アンケートで本人の意識を尋ねるだけでなく、実際の行動にも目を向けたい。
例えば、ヒヤリハットや不具合の報告件数、問題が現場から上司に届くまでの日数、退職者面談で初めて明らかになる問題の数などだ。こうした数字を見ることで、心理的安全性が高まり、報告しやすい職場になっているかを確認できる。
ただし、数字の解釈には注意が必要だ。例えば、不具合の報告件数が増えたとしても、それだけで職場の状態が悪化したとは限らない。心理的安全性が高まり、これまで黙っていた問題を報告できるようになった結果とも考えられるため、件数の増減の背景まで見る必要がある。
この3つの見方に加え、心理的安全性だけを単独で評価しないことも重要だ。エドモンドソンは、心理的安全性の高低と、仕事に求める基準の高低を掛け合わせて職場の状態を整理している。
心理的安全性と仕事の基準がどちらも低い「無関心」、仕事の基準は高いが心理的安全性は低い「不安」、心理的安全性は高いが仕事の基準が低い「快適」、両方が高い「学習」である。
心理的安全性だけを高めようとすれば、単に居心地が良いだけの職場になってしまう可能性があるため、目指すべきは「学習」の状態である。
世界最大かつ最古の人事・人材開発の専門機関、英国CIPDのエビデンスレビューでは「心理的安全性を高めることを目的とした介入の効果を定量的に測定した実証研究は見つかっていない」としている。つまり、研修や1on1など、心理的安全性を高めるために行われている施策は、「導入すれば心理的安全性が高まる」と言えるほどの根拠が十分に蓄積されているわけではないということだ。
だからこそ、「心理的安全性を高めるにこの施策が必要だ」と安易に飛びつくのではなく、自分たちの職場の心理的安全性の高さを正しく把握することが必要なのである。
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