保険業界の不祥事は、今に始まったことではない。
2019年には、かんぽ生命が不適正な保険募集で業務停止命令を受けた。2005年には明治安田生命と三井生命が、保険金の不払いや管理体制の不備で行政処分を受けている。2008年には日本生命と第一生命が、支払漏れによって業務改善命令を受けた。日本を代表する保険会社が、いずれも同様の問題を、形を変えながら繰り返してきたのだ。
なぜ、保険業界ではこれほど不正が繰り返されるのか。この業界には、他業界にはあまり見られない構造的な問題がある。以下の5つである。
それでは、特に本質的な要因を掘り下げていこう。
保険商品は極めて複雑であり、専門知識のない顧客がその価値や制度を正確に理解することは困難だ。この情報の非対称性を逆手に取り、顧客との長期的かつ密接な信頼関係が築かれる。
しかし、この「担当者を全面的に信頼し、将来設計まで任せる」という保険営業の強みが、ひとたびゆがんでしまえば「架空の社外投資商品の紹介」や「不適切な金銭貸借」を見逃す温床に変わってしまう。
さらに、営業担当者に強いプレッシャーを与えるのが、極端な成果報酬型の報酬体系である。プルデンシャル生命では、契約を獲得すれば億単位の年収を得られる一方で、成績が振るわなければ収入が激減する。
同社は会見で、一部の営業社員が活動経費や生活資金に窮し、その生活苦が顧客から不適切に金銭を借り入れる直接の要因になったことを認めている。成績を出さなければ「生活が破綻する」という極限の恐怖が、営業担当者を逸脱行為へと駆り立てていたのだ。
この反省から、同社はフルコミッション制からの脱却を進め、最低基本保障給を導入した上で、短期に偏っていた報酬を長期に分割して支払う(アフターサービスや保全活動への報酬比率を大幅に引き上げる)仕組みに移行させるという。しかし、制度という「枠組み」を変えるだけで、一度根付いた行動原理をどこまで是正できるかは未知数だ。
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