フードデリバリー撤退クロニクル 市場拡大でも8社が退場、なぜ? 「Uber Eats一強」の後に残るもの古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(1/3 ページ)

» 2026年08月31日 07時00分 公開
[古田拓也ITmedia]

筆者プロフィール:古田拓也 株式会社X Capital 1級FP技能士

FP技能士センター正会員。中央大学卒業後、フィンテックスタートアップにて金融商品取引業者の設立や事業会社向けサービス構築を手がけたのち、広告DX会社を創業。サム・アルトマン氏創立のWorld財団における日本コミュニティスペシャリストを経てX Capital株式会社へ参画。


 また1社、フードデリバリーの大手プレーヤーが消えた。

 KDDIは8月19日、子会社が運営するフードデリバリーサービス「menu」を9月30日で終了すると発表した。サービス終了後、運営会社のmenuを解散・清算する。

 KDDIは「フードデリバリー市場を取り巻く競争環境の変化や今後の事業見通しを総合的に検討した結果、経営資源の最適配分の観点から」撤退したと説明している

 KDDIの資本力で展開してきたmenuは、コロナ禍後に市場から姿を消した8つ目の主要フードデリバリーサービスになった。

 そして注意すべきは、これが市場の縮小によるものではないという点だ。経済データを扱うCREX(東京都台東区)の調査によれば、日本のフードデリバリー市場は2025年に8240億円(前年比2.0%増)で、コロナ禍前の2019年比では97.0%増と約2倍の水準を保っている。

 需要は消えていない。それでも事業者は消えていく。なぜか。

photo フードデリバリー事業者の撤退が相次いでいる(写真:ゲッティイメージズ)

フードデリバリー撤退クロニクル 市場拡大でも8社が退場、なぜ?

 まず、何が起きたのかを一覧で振り返りたい。終了時期の順に並べると、フードデリバリー事業者の退場が2つの波に集中していることが分かる。

photo フードデリバリー事業者の動向(筆者作成)

 第1の波は2021〜2022年に到来している。2021年6月にNTTドコモの「dデリバリー」、2022年1月に「foodpanda」(フードパンダ)、5月に「DiDi Food」、7月に「楽天ぐるなびデリバリー」(旧楽天デリバリー)がサービスを終了した。約1年の間に4つのサービスが消えた。

 第2の波が2026年だ。3月に「Wolt」、そして9月にmenuである。

 面白いのは、この2つの波で消えた顔ぶれの質が違うことだ。

 第1の波で消えたサービスのうち、楽天デリバリーとdデリバリーは、コロナ禍以前から事業を継続してきた既存勢だ。楽天デリバリーの開始は2002年2月で、終了まで20余年を数える。dデリバリーもドコモが2014年5月から提供してきたサービスだった。特に楽天デリバリーは、あのリーマンショックの局面すら乗り越えている。

 しかし、そんな老舗が“コロナ特需”で参入してきた新興・海外組との消耗戦の中で圧迫されていった。特需は、堅実に取り組んできた事業者もまとめて競争に放り込んだのだ。

コロナ禍の“フードデリバリー乱戦”、Uber Eatsは強かった

 一方、2026年に消えたのは特需組の生き残りだった。国内スタートアップのChompy(東京都千代田区)は2023年5月に撤退しており、2つの波の谷間で脱落した形だ。

 そして特需組に共通するのは、各社が参入時に「『Uber Eats』にない何か」を持つ革新的な挑戦者として持ち上げられたという点ではないだろうか。

 ドイツ企業が手掛けるfoodpandaは、2020年9月、神戸・横浜・名古屋の3都市から日本に上陸し、大都市圏の外側を軸に攻めた。中国のDiDiグループ企業が運営するDiDi Foodは、サービス料を取らないことで料金の安さを売りにした。

 Chompyは配達員コミュニティーと接客品質で差別化を図り、menuはテークアウト併用とサブスク割引、KDDIの「auスマートパスプレミアム」会員向けの配達料無料といったau連携で独自色を出した。

 新興が注目度を高めるたびに「今度こそUber Eats一強が崩れるのでは」という声も散見された。しかしUber Eatsは倒れなかった。

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