「○○さんに聞けば分かる」をAIに 日立建機がベテランの知恵を共有したワケ:AIエージェント組織実装の最適解(2/8 ページ)

» 2026年09月28日 08時00分 公開

迅速な顧客対応を妨げていた2つの問題

問題(1)情報検索の非効率性と属人化

 問い合わせは世界中の拠点から届くため、その多くが英語です。内容の理解と翻訳だけで相当な時間がかかります。

 さらに、やっかいだったのは、対応内容の記録方法です。修理手順や対応プロセスは人によって状況も判断も異なるため、決まった書式で残すのが難しく、自由記述で書き込むのが通常でした。同じような不具合の対応でも、人によって書きぶりが異なります。

 そのうえ、これらの対応事例を探す手段はキーワード検索に頼る部分が大きく、膨大な記録のなかから的確なキーワードを選び出すためには、長年の業務経験が必要でした。経験の浅い若手社員では、必要な情報にたどり着くまでに1時間以上かかることもあったと言います。

 とはいえ、検索システムそのものの刷新は、要件定義から開発まで多大な時間とコストを要するため、現実的ではありませんでした。

(出典:ゲッティイメージズ)

問題(2)回答作成の負担

 回答にも決まったフォーマットはなく、毎回ゼロから文章を組み立てる必要がありました。行き詰まる若手には、ベテラン社員がOJTでアドバイスします。しかし、そのベテランが不在のとき、若手は1件の対応に1時間、長いときは4時間を要することもあり、迅速な顧客対応のボトルネックになっていました。

 この2つの問題に共通するのは「ベテランの頭のなかにしかない知見」に依存していたことです。「この問い合わせなら、過去のあの事例が近い」「この症状なら、こう解釈すべきだ」といった判断基準は、FIRやほかの社内情報で確認できるケースもありますが、多くの場合、経験豊富なベテラン社員に聞くしかありませんでした。

 加えて、テクニカルサポート部は日本・アジア大洋州・米州・欧州といった地域ごとに 担当が分かれており、縦割りゆえに「ある地域で経験済みの不具合が、別の地域では共有されていない」という分断も起きていました。せっかくの知見が「人」にも「地域」にも閉じてしまっていたのです。

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