日立建機の事例が示唆に富むのは、若手とベテランの双方の働き方が同時に変わったことです。
それまで若手社員は、FIRやほかの社内情報を確認して答えが見つからない問題に直面すると、経験豊富なベテラン社員に聞くしか術がありませんでした。
一方、ベテラン社員は「○○さんに聞けば、たいてい答えてくれる」と頼られる存在であるがゆえに、若手・中堅からの相談が集中。自分の業務をこなしながら教える時間も捻出しなければならないという慢性的な忙しさを抱えていました。
FIR検索アシスタントは、この構造を大きく変えました。若手はアシスタントに尋ねれば、ベテランの思考プロセスを介したアドバイスにアクセスできます。
出張で世界各地を飛び回るベテランがその場にいなくても、「いつでも、どこでも、一番詳しい人に聞ける」状態が成り立つのです。
一方、ベテラン側にとっても、自分の頭のなかにあった言語化しにくい判断基準が、若手にも使えるかたちで蓄積されることで、自分の業務に集中できる時間が増えました。
「若手の成長とベテランの時間。両方が同時に得られたという実感がありますね」と齋藤氏も手応えを感じています。
日立建機がAIアシスタントの導入によって実現したのは、単なる業務効率化だけではありません。ベテランの思考プロセスを新人がAIを介して追体験することで、若手の業務遂行能力そのものが底上げされ、人が育ち、組織の業務水準が上がっていきました。
「世代を超えた技術伝承」こそが、この事例から私たちが受け取るべき最大のメッセージなのです。
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