それでは、狙い通りの成果は出るのか。データを使った施策で乗客が増えるかどうかを考える上で、手がかりが1つある。つくばエクスプレスはクレカ乗車にオフピーク割引を取り入れ、通勤ラッシュを避けた時間帯の普通運賃を自動で20%割り引いている。
実施前の2026年4月と、実施後の7月を比べると、対象時間帯の1日当たりの乗降件数は6倍を超えた。石塚氏は「混雑緩和の対策として、利用時間帯のシフトにもつながったと聞いている」と説明する。
ただ、割引と違って、乗車ポイントは200円につき1ポイントが翌月に付くだけだ。この差で人が乗り方を変えるかどうかは、まだ分からない。クレカ乗車の利用件数は5月、Visaの30%キャッシュバックで大きく伸びた。それでも石塚氏は「1つの施策で伸びているというより、いろいろな相乗効果で伸びている」とみており、ポイントによる効果だけを切り分けてはいない。
杉浦氏は、この2年間を、共通ポイントが公共交通の利用にどんな価値を持つのかを「しっかり見極める」期間と位置付ける。0.5%はあくまで基本の率だ。前述の施策でキャンペーンとしてポイントを上乗せし、乗車や沿線での消費が増えたかどうかを確かめていく設計になっている。
実験には限界もある。stera transitは、クレカなどのタッチ決済による乗車を可能にする公共交通機関向けの仕組みで、国際7ブランドに対応している。一方、乗車ポイントの対象はVisaに限られ、データが集まる範囲もそのぶん狭くなる。
結局のところ、サービスが続くかどうかは、交通事業者がメリットを認めるかどうか次第だ。杉浦氏も「交通事業者が自分たちにメリットがあると判断すれば、2年にこだわらず続けたい」という立場をとる。
10月に始まるのは関東の4社だけで、この点を問われた杉浦氏は「関西もやりたい。われわれの営業努力が足りなかった部分もある」と答えた。2年後に問われるのは、ポイントによって乗客が増えたという成果を、次に加わる鉄道会社に示せるかどうかだろう。
金融・Fintechジャーナリスト。2000年よりWebメディア運営に従事し、アイティメディア社にて複数媒体の創刊編集長を務めたほか、ビジネスメディアやねとらぼなどの創刊に携わる。2023年に独立し、ネット証券やネット銀行、仮想通貨業界などのネット金融のほか、Fintech業界の取材を続けている。
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