1990年代にこの制度が導入されたばかりの頃ならば「もともとは55歳で引退のつもりだったし、残りの会社人生は役職を離れて気楽に過ごすのもいいか」と考える50代後半の会社員も多かったかもしれない。
しかし平均寿命が伸び、今の50代後半はかつてより若々しい。「55歳になったから課長職を降りてください」と言われても納得しがたい人も多いだろう。また、晩婚化により50代でもまだまだ子育てにお金がかかるという人、昨今の経済状況においては老後の生活に備えてできるだけ稼ぎ続けたいという人も多い。
一方、企業の中にはミドル・シニア層の知識や経験に期待し、中途採用を行う企業も出てきている。そうなると「うちの会社では55歳で役職定年させられる。今のうちに50代以降もやりがいが得られそうな会社に転職しよう」と考えて、優秀な社員が40代のうちから出ていく可能性もある。
そこまでアクティブでない社員の場合は、役職定年の前から「どうせあと数年で役職はなくなる」とやる気を失ってパフォーマンスが下がる懸念もある。役職定年を受け入れたものの「こんな給料じゃやっていられない」と不満を抱いたり、「役職もない身だし、しゃしゃり出てはいけない」と遠慮しすぎて能力を発揮できなかったりすることもある。
このように役職定年制度の負の側面が目立つようになると、企業としても廃止を考えるのは当然の流れだ。実際、人事院の調査報告「令和5年民間企業の勤務条件制度」によると、事務・技術関係職種の従業員がいる企業のうち「役職定年制がある」企業の割合は16.7%にすぎない。
しかし、その16.7%の企業のうち95.3%は、役職定年制を「今後も継続」する意向だ。その理由は定かではない。しかし、廃止するなら等級制度、評価制度、給与など人事制度を幅広く見直す必要があり、なかなか手を付けづらいということは想像できる。
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