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「コントラスト」「位相差」2つのAFを理解するデジカメ「超」基礎解説

» 2010年09月14日 11時31分 公開
[ITmedia]

 前々回(→デジカメ「超」基礎解説:絞りとシャッタースピードの関係を理解する)はデジタルカメラを使う上でまず理解したい、「露出」そして「絞りとシャッタースピードの関係」について説明しました。そして前回(→デジカメ「超」基礎解説:ISO感度と写りの関係を理解する)では、露出に大きな影響を与える「ISO感度」について説明しました。

 今回は明るさの話から一歩進めて、近年のカメラに欠かせない機能である「オートフォーカス」について説明したいと思います。オートフォーカスフォーカスは「オート」と名前が付くよう自動でピントを合わせる機能で、デジタルカメラでは主に「コントラストAF」「位相差AF」の2つが用いられています。その違いについて理解しましょう。

「フォーカス」とは

 デジタルカメラで写真を撮る際には、外部の光をレンズを通じて撮像素子へ当てることで撮影が行われます。その時に光を「どれだけの量」「どのくらいの時間」あてるかで写真の明るさ=露出は決定されます。ですが、適正な光を取り込んだところで、対象へピントが合っていなければ、その写真はいわゆるピンぼけ写真となってしまいます。

 少々難し言い方になってしまいますが、ピントが合っている状態とは、「被写体の位置に光源があると仮定した際、そこからの光が撮像素子面で1点に集中する状態」を指します。手動ではなく、カメラが自動的にこの状態を作り出す機構が「オートフォーカス」と呼ばれるものなのです。

photophotophoto 中央の人形を狙う被写体とした場合の例。中央は被写体にピントが合っている状態。左は被写体手前に、右は被写体奥にピントが合っている

コントラストAFとは

 コントラストAFとは、撮像素子に映った映像をもとに、ピントレンズを動かしながら明暗差(コントラスト)が大きなところを探してピントを合わせる方式です。撮像素子とAF用センサーを兼用できるのでカメラ本体の小型化が可能となるため、コンパクトデジカメで広く使われる方式です。

 近年では検出アルゴリズムの進化や撮像素子画素数の増大(判断基準となる情報量の増大)、加えて顔検出機能の普及もあり(画面上に顔があると認識されればそこへ優先的にピント合わせを行える)などで高速化も図られていますが、レンズを動かして(フォーカスを動かしながら)AFエリアの輝度を把握しないといけないので、後述の位相差AF方式に比べて、ピント検出に時間がかかるというデメリットがあります。

位相差AF

 位相差AFとはレンズから入った光を2つに分けて専用のセンサーへ導き、結像した2つの画像の間隔からピントの方向と量を判断する方式です。コントラストAFに比べると、レンズを動かしながらピントを探る必要がないので高速にピント合わせを行うことができますが、専用センサーとレンズから入った光を撮像素子と専用センサーへ分岐させる仕組みが必要となるためにカメラ本体の小型化が難しくなり、これまでは一眼レフカメラでの採用がほとんどでした。

photo 位相差AFの基本的な仕組み(※初出時、後ピンの説明文に誤りがありましたので、訂正致しました)

 最近のデジタル一眼レフカメラでは背面液晶を見ながら撮影できる「ライブビュー」機能の搭載が標準化していますが、ごく一部を除き、ライブビュー撮影時のオートフォーカスはコントラストAFになります。これは撮像素子に光を当て続けながら撮影するためには、光を分岐させるための仕組みであるミラーを上げた状態にする必要があり、この状態ではAF用センサーへ光を導くことができなくなるからです。

第3の方法を搭載したカメラ

 コントラストAFと位相差AFのメリットとデメリットを比較して整理してみましょう。コントラストAFは専用センサーが必要ないかわりにAFスピードを向上させにくく、位相差AFは専用センサー(および光路を分岐させる仕組み)が必要となるため本体の小型化が難しくなるかわりに、高速なAFを実現できます。

 小型化と高速化、この2つはコントラストか位相差かという選択を迫られる限り矛盾する要素となりますが、新たな機構を開発することで両要素を高い次元で結びつけた製品が登場し始めました。

 1つは光路を分岐させる仕組みであるミラーを半透明にすることで、レンズから入った光をどちらか一方へ分岐させるのではなく、双方同時に分岐させる構造を採用したソニーの一眼カメラ「α55/33」です。撮像素子とAF用センサー、双方へ常に光が導かれているためライブビュー撮影時にも高速なAFが行えます。

photophoto ソニー「α55/33」に搭載された半透過型ミラー。光はつねに矢印の2方向へ分岐する

 もう1つは撮像素子のなかに被写体との距離を検出する「位相差画素」を組み込み、位相差検出による高速なオートフォーカスを可能とした富士フイルムの「FinePix F300EXR」「FinePix Z800EXR」です。これらの製品では利用シーンに合わせてカメラがコントラストAFと位相差AFを自動的に切り替えてくれます。

photo 富士フイルム「FinePix F300EXR」「FinePix Z800EXR」は撮像素子に被写体との距離を検出する「位相差素子」を組み込んだ

 常に位相差AFを利用した方が快適になると早合点しがちですが、コントラストAFは画面を全走査できるため、どこに対象物があっても快適なAFが可能になるほか、本製品で採用されてる撮像素子である「スーパーCCDハニカムEXR」は画素混合を行うために暗所での対象認識に優れています。そのため、ある程度明るい場所では位相差AF、暗いとコントラストAFとカメラがより高速かつ正確なAFを実現できるよう、自動的に制御を行うのです。

photo 35ミリ換算24〜360ミリの光学15倍ズームレンズを搭載する「FinePix F300EXR」

 富士フイルムでは「望遠撮影時のAFの遅さ」をコンパクトデジカメの課題として認識しており、高倍率ズームレンズを搭載したこれら製品(FinePix F300EXRは35ミリ換算24〜360ミリの光学15倍ズームレンズ、FinePix Z800EXRは35ミリ換算35〜175ミリの光学5倍ズームレンズ)から本技術の搭載を行い、これまでのコンパクトデジカメでは撮れなかった画角を快適に撮影できる環境を提供しています。

 カメラの小型化、動作の高速化、なかなか両立させにくいこの2要素を高次元で結実させるため、これらの技術やアイディアはこれからも進歩していくことでしょう。

(取材協力=富士フイルム)

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