さて「Nikon 1 J1」の長期試用リポート、第1弾である。本企画へ取りかかる前に上位機種である「Nikon 1 V1」を試用する機会があったのだが、フォーサーズよりさらに小さいセンサーなのにも関わらず、良く写るカメラだという印象を受けた。
ミラーレス機は、APS-Cサイズのセンサーを搭載するソニー「NEXシリーズ」や、オリンパス、パナソニックのフォーサーズ/マイクロフォーサーズなど、センサーサイズでコンパクトデジカメと差別化をしたり、ペンタックス「PENTAX Q」のようにボディサイズで他機種との差別化を図るなどの個性を出している。
で、センサーが大きいわけでも、ボディがことさら小さいわけでもない「Nikon 1」には違和感を覚えていた。なにかこう、消費者ニーズとのズレというか釈然としないものを感じていたのだ。
上手い例えが見つからないが、人気のバンドが新しい音楽性を見つけるために、新しいジャンルの音楽をやるのではなく、ボーカルを変えてしまったような感じだろうか。利用する前には、「そこじゃないんだよなあ……」というため息がでそうな感じになるかと思っていたのだ。ただ、そんなイメージを持ちつつNikon 1 V1を試用する内に、その印象は前述のようにプラス方向へ変わったのである。
そして、今回のNikon 1 J1となったわけだが、V1の持つ拡張性(スピードライト、ステレオマイクロ、GPSユニットなど)とEVF(電子ビューファインダー)、それにシャッターユニット、液晶モニターの解像度などの違いこそあれ、基本性能は同じ。同じ画素数で同じオートフォーカスモードで、同じフルHDの動画が撮れる。
外観上ではEVFの有無でV1とJ1の好みが分かれそうだが、V1のEVFの側にあるアイセンサーはやや過剰反応気味で、予想外な場面で液晶モニターからEVFに切り替わったりする傾向があり、もう少しチューニングが必要かとも思う。そういった意味で、付加ハードウェアの少ないJ1はその割り切りを評価すべきなのかもしれない。
さて、そのNikon 1だが高感度特性に優れている印象を受けていたので、これならば発表会や取材用のカメラとしても使えるのではないかと思い、幕張メッセで開催されていたプロ用の映像・音響機材の展示会である「Inter BEE 2011」へ足を運んでみた。
会場内はストロボなしで撮影する場合、標準ズームレンズでISO400〜800程度、ブースの展示によってはISO800〜3200まで必要な所もあり(この辺は個人的な感覚だ)、撮影には高感度が要求されるとともに、高感度でも破綻しない画質も必要となってくる。撮影は、ホワイトバランスの補正などをするためRAWで行ったが、確認用にJPEGの同時記録も行ってみた。
ISO感度はISO AUTO 100-3200で行ったがISO感度の上がり具合が悪く、シャッタースピードが1/3秒なのにもかかわらずISO800のままという事もあった。ISO AUTO時にISO感度の上がり方を設定できれば、この様な挙動で困ることもないのだが、残念ながらISO AUTOはカメラ任せのオートのみとなっている。J1の性格上、仕方ないとも思えるがここはちょっと残念に思えた。
最後に、J1とD700を使用して同じ条件で撮影比較を行ったところ、測光のためのハードは違えど、露出パラメーターは全く同一という頼もしいデータが取れた。絞り優先オートでF5.6/ISO400/マルチパターン測光だと、シャッタースピードは両機種とも1/160秒と出た。
とはいえ、これではアンダー過ぎる。そこでマニュアル露出でシャッタースピードを1/50秒に合わせて撮影した。ピクチャーコントロールはどちらもスタンダードで、見事に統一された発色となっている。同じメーカーの製品による連携が取りやすく、もう少し本格的な用途に使えそうな感触を得られた。
どちらもRAWデータから歪み補正をオン(J1はノイズリダクションの調整も行った)にして現像している。
今回、実際に展示会取材という仕事場で使用してみて、オートフォーカスの使いこなし、ISO AUTOの使い勝手などに改善して欲しい要素などが見えてきたが、カメラとしては取り回しもよく、取材用として十分使えることが分かった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR