RAW現像ソフトの定番「Adobe Photoshop Lightroom」の最新版、「Lightroom 4」が提供開始されて1カ月ほどが経過した。RAW現像機能や動画編集機能の強化、新モジュール「マップ」の追加など機能面でも確実な進化を果たしているほか、アップグレードおよび乗換え/特別提供版ならば1万80円と、前バージョンに比べて大幅な価格改定が行われており、気になっている人もいるだろう。
同社にてLightroomのマーケティングを担当する米アドビシステムズのディビット・アウヤン氏に、新バージョンの特徴や狙いを尋ねた。
アウヤン氏:まずはバージョン3と比べての進化点ですが、大きく分けて2つに分類できます。ひとつは画質の向上、もうひとつは画像利用(共有)の多様化です。
画質向上について大きな機能強化は、ハイライト/シャドウの制御です。これまでに比べてより細かな復元が可能となったほか、補正ブラシ機能が強化され、特定部分についてのみシャープやノイズ、モアレを調整できるようになりました。ハイライト/シャドウの細やかな制御はPhotoshopにも実装されておらず、Lightroom 4からの搭載となっています。また、写真に複数光源がある場合に、一部分だけの調整も行えます。これもLightroom 4だけの機能です。
画像の利用については「マップ」と「ブック」モジュールを組み込みました。マップを使えばEXIFに埋め込まれている位置情報に基づいた整理が行えます。より、一般ユーザーに向けた機能といえるでしょう。ブックはオンラインでアルバムを注文できる機能です(注:現時点ではドル決済のみ)。
――Lightroomはバージョン3でも十分な機能を持っているように感じていましたが、新バージョンをリリースする際、念頭に置いていたことは何でしょう。また、デジタルカメラ、とくにデジタル一眼の普及は、想定するLightroomの利用者層に変化を与えましたか。
アウヤン氏:念頭に置いたのは「写真家のエクスペリエンス」を改善することです。そのために新たな調整機能を加えましたし、スライダの向きを変更するなど操作インタフェースも一部改良しました。バックエンドの処理も新たなものを導入していますが、「カメラキャリブレーション」の「処理」を「2010」とすればバージョン3の現像処理とインタフェースを利用できます。
Lightroomがカメラのプロフェッショナルに向けた製品であることにかわりはありません。ですが、デジタル一眼の普及にともないカメラの利用者層も大きく拡大しています。新バージョンでは、より幅広い層へアプローチしたいとも考えました。おかげで販売も好調に推移しています。
新機能の搭載も好調要因のひとつと考えていますが、RAW現像という行為が定着しつつあり、新バージョンの投入でその拡大を果たせたのではと感じています。また、LightroomはRAW現像だけではなく、JPEG撮影された画像の加工編集も行えます。スマートフォン(カメラ付き携帯電話)の普及で、よりデジタル写真が身近なものになったことも、「デジタル写真のためのソフト」でもあるLightroomの利用者を増やしたのではないか、と思います。
――既にRC2が提供されていますが、バージョン4.1の投入は近々なのでしょうか。動画編集機能の強化は予定されていますか。
アウヤン氏:4.1は数週間の内にリリースできると思います。ワールドワイドでの同時リリースを行いますので、日本語版もそう遠くないうちに4.1となります。
4.1ではいくつかの機能強化が行われますが、そのひとつとしてフリンジ除去機能の強化が挙げられます。これまでもフリンジの除去機能はありましたが、新たにグリーン/パープルフリンジについての除去機能が追加されます。単焦点レンズの利用時に発生しやすいノイズですので、便利に使えると思います。
動画編集の強化は考えていません。基本的にはシンプルな「調整」にとどめるつもりです。あくまでもLightroomは「(静止画の)写真をどうしたいか」に多彩な選択肢を提供するソフトです。
――低価格化されたこともあり、プロやハイアマチュアではない、いわゆる一般コンシューマもLightroomに興味を持っていると思いますが、Lightroomはあくまでもプロ向けを指向するのですか。それとも「写真を撮るすべての人」を指向するのですか。
アウヤン氏:まず、プロフェッショナルの方にハッピーになって欲しいと思います。ですが、デジタル時代になって、写真を撮る一般の人が爆発的に増えていることも事実です。そうした方も、プロが使う、プロが満足できる機能を欲しいと思うのです。プロでもアマチュアでも、双方のお客さんが満足できるプロダクトを提供していきたいと思います。
すべての写真家が商業活動をするプロという訳ではありませんし、個人的には、Lightroomを通じて、多くの人がより写真を楽しいと感じてくれればうれしいですね。
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