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シンプル操作でも楽しめるポケットサイズの「X」――「FUJIFILM XF1」(2/3 ページ)

» 2012年11月01日 14時32分 公開
[佐藤直宏,ITmedia]
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軽快なスタイルが似合うカメラ

 撮像素子はレンズ一体型のコンパクトデジタルカメラとしては比較的大型な部類に属する、有効1200万画素 2/3型EXR CMOSセンサーで、スペックシート上はX10と同等。2/3型と比較的大型の撮像素子と明るいレンズを搭載していることもあり、室内や屋外、昼間や夜間などさまざまなシチュエーションで余裕のある撮影を楽しめる。解像感も高く、描写は非常にシャープだ。

 ISO感度は、100〜3200まで設定可能で、拡張設定により最大ISO12800までの撮影が可能となっている。ISO4000以上は画素混合によるものでフル解像度(4000×3000ピクセル)での撮影はできなくなるが、画素混合といっても一昔前のものとは雲泥の差であって、ハガキサイズな小さなプリント用なら問題なく利用できる。

 

photo フルサイズ記録での最高ISO感度であるISO3200での撮影。 等倍で見ればさすがにノイズは目立つが、全体としては上手にまとまっている

 EXR CMOSセンサー搭載機なので、フルオートの撮影モードである「プレミアムEXRオート」であれば、カメラが被写体を判断して、「高感度低ノイズ優先」(SH)、「ダイナミックレンジ優先」(DR)、「高解像度優先」(HR)の3パターンから適切なものが自動的に選択される。また、モードダイヤルを「EXR」に合わせた状態でメニューを呼び出せば、SH/DR/HRのいずれかのモードを任意に選んで撮影することもできる。

 ちなみにプレミアムEXRオートならば、必要に応じて連写合成によるブレ及びノイズ低減も自動的に行ってくれる。他の撮影モードならば細かく設定を施せる部分(シャープネスやハイライト/シャドウトーン調整など)もカメラ任せになってしまうので、マニュアル派には不満が残るかもしれないが、軽快に持ち歩いてシャッターひとつでスマートに撮る、そんな撮影スタイルもこのカメラにはよく似合う。

 軽快にスナップを楽しむという意味では、撮影モードダイヤルに用意された「Adv」(アドバンストフィルター)も活用したい機能のひとつ。

 このアドバンストフィルターはX10では10月に提供された機能拡張ファームウェアで実装された、いわゆるデジタルフィルター機能だが、Advのポジションからはトイカメラ/ミニチュア/ポップカラー/ハイキー/ダイナミックトーン/パートカラー(レッド/オレンジ/イエロー/グリーン/ブルー/パープル)のほか、360度パノラマ、背景ぼかし、連写重ね撮り、多重露出、3D撮影など、フィルムシミュレーションより効果のハッキリした、特徴ある撮影機能も選択できる。

 アドバンストフィルターのブラケット撮影ができないのは残念だが(フィルムシミュレーションはブラケット撮影可能)、効果が派手目なだけに、あればうれしい撮影機能であり、そこへのアクセスが用意なのは歓迎したいところだ。

photo アドバンストフィルター「トイフォト」

 光学4倍ズームレンズ(35ミリ換算25〜100ミリ相当)の開放F値はワイド端でF1.8と非常に明るい。テレ端ではF4.9と落ち込んでしまうのは残念だが、薄さを考えれば致し方ないか。鏡胴付け根に「25」「35」「50」「80」「100」と焦点距離が表記されている(いずれも35ミリ換算)のも心憎い気配りといえよう。

 X10も光学4倍ズームレンズという意味では同じだが、XF1のほうがワイド端の開放F値が明るく(X10はF2.0)、X10のほうが望遠端が明るい(X10はF2.8、XF1はF4.9)。コンパクトデジカメとしては2/3型と大型のセンサーを搭載していることもあり、比較的大きなボケが得られるのも魅力といえる。

 最短撮影距離は標準状態/ワイド端で約50センチ、標準状態/テレ端で約80センチ、マクロモード/ワイド端で約3センチ、マクロモード/テレ端で約50センチとなる。50センチを境に標準/マクロを切り替えることになるが、切り替えなしでもう少し寄れたらと感じたシーンもあった。


 富士フイルムの「FUJIFILM X」シリーズといえば、X100から始まる積極的な製品展開もあり、冒頭でも述べたように「カメラ好きのためのカメラ」としての立ち位置を既に確保しているシリーズだ。そのなかで唯一ファインダーを持たず、操作ダイヤル類を減らしたXF1は異色の存在であるように思えるが、所有欲を満たす高い質感やX10にも通じる画質の高さは撮ってみれば確かにシリーズ製品の1つであることを伝えてくる。

 操作して撮ることもカメラの楽しみだが、気軽に撮ることもカメラの楽しみであり、そうした意味ではシリーズ製品に比べ、ファインダーを始めさまざまな要素を省いたことは決してマイナスではなく、Xシリーズの製品として固持すべき部分は保ったまま、新しい魅力を提示しているモデルといえるだろう。

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