今、注目のコンデジといえばソニーのサイバーショット「RX100」である。他社のハイエンドコンデジより大きな1型センサーを搭載し、コンデジでは最高画質を実現しながら、ボディはコンパクトで、フルオートで誰でも気軽に使えるというシンプルさがよかったのだと思う。ハイエンド機なのに難しそうに見えないもの。
そんなRX100には、無印、M2、M3というバリエーションモデルがあり、“三兄弟”として展開されている。一見、ほとんど変わらないカメラが店頭で3つ並んで売られてるのだ。
で、その3兄弟はどう違うの? 価格差はどうなの? やっぱ最新版がいい? もしかして、初代機が一番安くて一番お得じゃね? という疑問に答えるべく、実際に撮って比較してみた。
この三兄弟が面白いのは、2012年に登場した初代RX100が今でも現行モデルであること。
普通なら、2代目のRX100M2が出た時点で、初代機は型落ちとしてフェードアウトしていくのに、今店頭へ行っても、初代RX100、2代目のRX100M2、3代目のRX100M3と三兄弟の如く並んで売られているのである。
普通なら2年前のコンデジなんて今更買う気にならないのに、今RX100を手にする人がけっこういる。発売から2年たったこともあって、実売価格が下がっており、お得感が増してるのだ。多少古くても、他社のコンデジよりは高画質だし、価格差を考えればRX100の方がお得、って判断する人も多いのだ。
で、実際にRX100三兄弟の実力差はどのくらいあるのか。
最初は基本性能の差から見てみよう。
初代RX100の発売は2012年、二代目のM2は2013年、三代目のM3は2014年。大きな共通点は2つ。
まずは見た目。細かな違いはあるけれども基本デザインが同じ。カメラをよく知らない人が見たら区別がつかないレベル。これは重要なポイント。シンプルかつ質感が高いデザインを保ったことで、2年前のモデルも古びて見えないのだ。
次はイメージセンサー。どれも1型センサーで約2000万画素。厳密にはM2でセンサーが裏面照射型に変更されて少し感度が上がっていて、M3では有効画素数が10万画素ほど少ないのだが、劇的な変化じゃない。だから画質面でも古びてない。
でも細かく見ると製品コンセプトや時代の違いがけっこう出ている。まずは基本性能をわかりやすく一覧表にしてみた。
これで分かる各機種の特徴であるが、一番違うのはレンズ周り。M3でレンズが一新されているのだ。焦点距離も明るさも最短撮影距離も違う。
細かいところでは、有効画素数がなぜかM3だけ10万画素少ないのかとか、ISO感度の差はどのくらいあるのかとかあるけれども、やはり最初のチェックポイントはレンズだ。
初代とM2のレンズは、28〜100ミリ相当の3.6倍ズーム。一方M3は24〜70ミリ相当で2.9倍ズーム。ズーム倍率で見ると落ちており、さらに広角寄りになった。早速広角端と望遠端で撮り比べ。比較しやすいよう並べてみた。
こういう距離感だと、70ミリ(相当。35ミリ換算。以下、略しますが実際の焦点距離ではなくすべて35ミリ換算です)と100ミリの差をけっこう感じる。あとちょっと寄れるか寄れないか。
その代わりレンズスペックは、初代とM2はF1.8〜F4.9。M3はF1.8〜F2.8。M3の方が望遠側で明るい。じゃあ初代とM2の70ミリ相当でのF値はどのくらいなのか?
というわけで表にしてみた。焦点距離と開放F値の表だ。これを見ると、M3でどのくらい明るくなったのかがよく分かる。
広角端ではF1.8だが、焦点距離が違う。大事なのは使いたい焦点距離の時どのくらいのF値になるかだ。
28ミリ相当で比べるとM3の方がF2.5と少し暗くなる。35ミリではどちらもF2.8。それ以上ではM3がずっとF2.8を維持し、70ミリ相当の段階でF4.0とF2.8となり、1段分の差が付く。
1段あれば同じシャッタースピードならISO感度を半分にできるし(だから多少暗くてもOKになる)、近距離の被写体を撮るときは背景のボケが大きくなる。
望遠側でF2.8は魅力的だが、ちょっとでも望遠を、という人は100ミリの初代機やM2も捨てがたいところである。
続いてレンズスペックネタ第2段として、撮影最短距離をチェックしてみた。
実はRX100が出たとき我々(まあデジカメ系の人たち)の間で話題になったのは、「意外に寄れないじゃん」ってこと。RX100もM2もM3も、広角端ではレンズ前5センチまで寄れる。これだけをみたら何の問題もなさげだ。なのになぜ“寄れない”と言われたか。
それはいつも広角側で寄るとは限らないからだ。
料理を撮るときなんかは、広角より標準域くらい(35〜50ミリ相当くらい)がいい。少し望遠にした方が形がきれいに見えるし、よけいな背景もカットできる。
初代やM2は広角端から少しズームしただけで撮影最短距離がぐっと長くなったのだ。こういうコンデジって身近なものを撮ることが多いから、最短撮影距離は大事なポイント。
そこで、ぬいぐるみを被写体に少しずつ動かしながら実写テスト、焦点距離と撮影最短距離の表を作ってみた。手作業でのテストであり、撮影するたびにピントの合うポイントが1〜2センチくらいずれたりしたので距離はアバウトにみてほしい。
初代RX100/M2とM3のどっちがより大きく撮れるか、という観点でいけば、初代RX100/M2である。同じ撮影距離なら、24ミリより28ミリの方が大きく写るから。こんな感じ。
これをもってマクロ撮影機能は初代やM2の方が上、と言えないこともない。
でもこれが35ミリにまでズーミングするとなると初代RX100/M2が約20センチまでしか寄れないのに対して、M3は約15センチ。50ミリになると初代RX100/M2が約40センチまでしか寄れないのにM3は25センチ。逆転するのである。
初代RX100/M2をさらに望遠にして100ミリで撮ったときと比べても、M3の方が大きく撮れる。
つまり、広角では初代RX100/M2の方が大きく撮れるけど、標準域から中望遠ではM3の方がぐっと寄れる(大きく撮れる)のだ。
この性能がどのくらい重要かは人によって違うけれども、料理や花など近距離のものをよく撮る人は気にした方がよい。
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