撮影性能以外にも三兄弟の違いはいくつもある。中には時間の流れによる機能の進化もあれば、コンセプトに関わる違いもある。
もっとも注目に値するのは撮影スタイルの違いだ。
初代RX100はもっともオーソドックスなモニター固定式。M2はモニターがチルト式になってローアングル/ハイアングルに対応。さらにアクセサリーシューが搭載され、別売のEVFが装着可能だ。
M3はさらに進化。ポップアップ式のEVFが内蔵されてファインダーを覗きたい人に標準で対応。チルト式モニターもヒンジの位置が変更され、180度回転可能に。自分撮りもできる。
この違いはとても分かりやすい。見た目の差にも現れる。モニターがチルトすればさっとしゃがむだけで地面すれすれの写真も撮れる。これはよい。
3モデルとも操作系は基本的に同じ。
レンズ周りのコントロールリングと背面のロータリーダイヤル、さらにいくつかのボタンで操作する。コントロールリングはどれもクリック感のないスムーズに回るタイプ。必要に応じて機能が変わるし、好きな機能を割り当てられるのもいい。
ボタンやダイヤルの数は同じだが、操作系は少しずつ進歩している。Fnキーを押すと表示されるメニューは、初代とM2は1段分だったが、M3ではデザインが変わって2段になった。
MENUのタブのデザインも変わっている。
そして、右下にある「?」キー(操作ガイド)がM3では「C」キー(カスタマイズキー)になっている。
初心者向けに撮影の仕方やセッティングを教える操作ガイドを前面に出さなくなったわけだ。それが不要な人にはさっと好きな機能に割り当てられるのがいい。
徐々に変化はしているが、マニュアル系撮影を行いたいハイエンドなユーザーには、基本的な操作以外はちょっとステップが必要なことに変わりはなく、相変わらずタッチパネルは未搭載だ。
AFポイントをさっと任意の場所に動かすためだけにもタッチパネルを搭載してほしかったところである。
初代からM2への進化の1つがWi-Fiの搭載。Wi-Fi機能を搭載することでスマホへ写真を転送したり、スマホをカメラのリモコンとして使うことが可能になった。M3ではさらにカメラ用アプリの利用にも対応した。Wi-Fi機能を使いたい人はM2かM3を選ぶべきだろう。
基本デザインは変わらないが、さすがに寸法も重さも3つとも同じというわけではない。そこで分かりやすいよう表にしてみた。
面白いのは幅と高さがそろっていること(M2はアクセサリーシューがある分、実質的にはちょっと高くなってるけど)。M2でモニターがチルト式になったことで2.4ミリほど厚くなり、M3ではレンズが分厚くなったことでさらに奥行きが伸びている。
注目すべきは重さ。
M2ではモニターのチルト化とWi-Fiで少し重くなり、M3ではさらにEVFを搭載してレンズも新しなった分さらに重くなり、初代RX100とM3では約50グラムの差がついた。大きさがほとんど同じということもあり、両方を手にすると明らかにM3がずしりである。
RX100の三兄弟を同時に使ったのは今回が初めてだったのだが、いろいろと新発見があった。
まず、初代RX100は2年前のモデルとは思えないほど古びてないこと。さすが長兄。まあ確かに撮影後にちょっと待たされたり、ファームアップで機能追加してくれないかなと思ったりするところはあるけど、基本性能は今でも十分通用するし、画質面でも問題ない。ハイエンドコンデジとしてはまだまだ上位にいる。
何よりM2、M3とちょっとずつ重くなってることもあり、M3より50グラムも軽い初代機は「シンプル&ベーシックなハイエンド機」としてまだ魅力があるのだ。
その上、初代は2年たっている分実売価格が下がっており、M3との価格差はけっこうある。2年分の性能・機能差と価格差のバランスがちょうどよい感じになっている。
コンデジの画素数競争も一息ついてるし、1型センサーの優位性もまだあるから、息が長いのだろう。
M2やM3となんだかんだいって被らない関係になれたのが、ソニーがどのくらい狙ったのかわからないけれども功を奏したか。
とはいえ、個人的にどれが欲しいかといわれたら、やはりM3。
焦点距離は24〜70ミリと望遠には弱くなったが、望遠端でF2.8という明るさと、標準域で初代/M2よりも寄れるのはでかい。身近なものをさっと撮りたいとき、近くてピントが合わなくてイライラするのは健康によくないもの。
ポップアップ式EVFのギミックもたまらん。
両者の間に立つM2といえばはアクセサリシューを唯一搭載するモデルという強みはあるが、このコンパクトなカメラでアクセサリシューを使った撮影(EVFや外付けフラッシュ、マイクロフォンなど)を、というニーズがどのくらいあるかは微妙かなと思う。
かくして、ギミック&高性能のRX100 M3と、シンプル&ベーシックな初代RX100。はさまれたM2はちょっと立場が弱そうという結論になったのでありました。
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