ゴールはビジネス指向アーキテクチャ、WebLogic Platform 9.0と次期Everestによる進化形

SOAを担うQuickSilverが大きく関わるBEA WebLogic Platform。その次期バージョン9.0のコードネーム「Diamond」、さらなる次期コードネーム「Everest」についても紹介された。

» 2004年06月18日 03時02分 公開
[木田佳克,ITmedia]

 既報のように、米BEA Systemsの「BEA WebLogic Platform」次期バージョン9.0は、SOA(サービス指向アーキテクチャ)実現のために大きな役割を担う。

 BEA eWorld 2004 San Franciscoに次ぐ、6月17〜18(金)まで東京・渋谷、セルリアンタワー東急ホテルで開催の「BEA eWorld JAPAN 2004」でも、コードネーム「Diamond」、BEA WebLogic Platform 9.0(以下、Diamond)の講演が聞けた。壇上の米BEA Systems、エリック・フリーバーグ氏からは、Diamondだけでなく、さらなる次期バージョンのコードネーム「Everest」についても語られた。

 フリーバーグ氏は、BEA WebLogic Platformの現バージョン8.1について、業務プロセス、複合化されたアプリケーション構築、XML利用の基盤が整った点に達していると語る。第2世代といえるWorkshopのフレームワークによってJ2EEの構築が容易になったのも成果のひとつだ。

Diamond、Everestはもちろん、SOA、QuickSilverなどさまざまなキーワードを語る

 Diamondは、柔軟性あるプラットフォームをダイナミックなSOAへと対応していくもの。ポイントとして6点が挙げられた。

 1つ目は、次期BEA WebLogic Server環境の拡張、常時稼働のためのカーネル実装にある。その根底には、エンタープライズWebサービスとして、XML Beans v2におけるデータバインドフレームワークがベースにあるという。この効果が相乗し、ノンストップサーバと称される次期バージョン9.0のコードネーム「Diablo」では、動的な環境実現がテーマとなる。サーバソフトのアップグレード中でもノンストップでWebサービスの運用が可能だ。

 2つ目は、Webサービスのメッセージのフローを維持するためのマネージャであり、他のミドルウェアと統合するためにQuickSilverが関わる。

 3つ目は、企業デスクトップのポータル化という。ポータルのフレームワークを利用し、企業のデスクトップを作り上げるというアプローチだ。

 4つ目は、Javaアプリケーションフレームワークの「Project Beehive」(関連記事)。BEA Workshop上の開発は、すべてオープンソースの標準化ベースにしていくという現れであり、今後のフレームワークとして注目されている。

 5つ目は、SDO、BPELJなどに関わる新たな標準テクノロジーとの関わりだ。

 6つ目は、ユーティリティーコンピューティングとして先ごろ発表された「Alchemy」と呼ばれるプロジェクトに関わるもの(関連記事)。

次期BEA Workshopはダイエットと多機能性に注力

 DiamondにおけるBEA Workshopは、メモリ要求量を減らし、機能ツールの網羅性追求として基本的なIDEの機能を統合していくことが大きな目的だ。おそらく他のツールでも使い慣れている機能が含まれると言い、コードリファクタリング、プロジェクトビルド、JavaBeans エディタ、ソースコードの管理機能、JUnitの統合、ウィンドウ管理なども行えるよう実装していくという。

 また、JSR 175を始め、JSR 181/109(WS-*)、JSP 2.0やJSFも取り込まれる。他の開発環境との統合も課題であり、SCM(ソースコードマネージメント)、Maven、Antとの統合なども課題だ。

QuickSilverとSOAの関わり

 Diamondのプロジェクト戦略を検討する中で、幾つかの焦点を当ててきたという。ひとつ目は「QuickSilver」であり、サービス指向アプリケーション環境を実現することで、今までの異質なWebサービス環境を統合するという狙いだ。

 QuickSilverにも幾つかのテーマがあるが、いちばんにはWebサービスと非Webサービスの収束を意味することという。一方で、各ベンダーはこれまでに多くのメッセージブローカーフォーマットに多大な投資を行ってきたため、いずれもサポートすることも大きなポイントだ。

 コンフィグレーションの容易さも大きい。コンソールからのプログラミングと呼ばれるこのアプローチでは、QuickSilverを利用すれば、ブラウザを介すコンソールを表示させ、言語開発中心型ではない設定変更が可能となる。メタデータで扱われるため、ただちに変更反映される。QuickSilverのコア部では、転送系としてJMS、HTTP、MQSeries、ファイル、Eメール、プロトコルではSOAPを始めXML、ほかにもメッセージングやルーティング、セキュリティ、バージョン管理、モニタリング&ログ、SLA、エラーハンドリング、サービスレジストリ、などとWebサービス管理として相応しいものが揃う。

 ほかにも「BPEL」、BPELのJava拡張となる「BPELJ」の組み合わせによっても「SOA」(サービス指向アーキテクチャ)へとつながる。BPELは実行言語でありビジネスプロセスの定義付けであるが、ビジネスロジックに依存しないようにBPELとBPELJでもバインドを行う。このため、People、CRMなどからはビジネスロジック変更が見えない存在となる(下写真)。

SOAの形
BPEL、BPELJで、より柔軟性を持たせた統合が実現可能

 Diamondのゴールは、ビジネスユーザー/アナリスト向けにあるという。ダイナミックな変更を開発者でなくても可能にするという意味だ。Javaコードを扱うことなく、ビジネスルールの変更が可能となることを目指す。

ゴールの具体化が進む

 さらに、Diamondの次に予定されるバージョンのコードネーム「Everest」では、いっそう進められた形となり、ビジネスニーズとシステムプログラマニーズに対応するコンピューティングエコシステムとして優れたものを目指す。

 目標として焦点を当てているのは、ビジネス指向アーキテクチャだ。Everestでは、一連のイベントを見る、またはサービス個々を見るという観点ではなく、メッセージング統合もしやすいインフラ実装を目指すため、QuickSilverが大きく関わる。

ゴールはビジネス指向アーキテクチャにある

 現在のBEA Workshopは開発者向けだが、さらに一歩進めた形として「ビジネス指向アーキテクチャ」のWorkshopという展開も考えているという。メタデータをひとつのビュー、または組み合わせて見る、などと手軽さを実現してこそ受け入れられるものだ。

 このような展開になれば、BAM、BIが第一級市民として扱われていくという。どれだけのメッセージがあるのかではなく、どれだけのビジネスのスループットがあるかを把握することが重要と語る。ITがビジネスにどのように関わっているかを判断する上でも、重要な位置づけだろう。

Diamond、Everestそれぞれが目指すテーマ

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