オープンなJavaこそ自治体のIT構造改革を加速

e-Japan関連カンファレンスでサンは、J2EEをベースとしたオープンな電子政府および自治体システムの構築こそが、e-Japanを加速することを強調した。

» 2004年08月03日 17時21分 公開
[浅井英二,ITmedia]

 都内のホテルで開催中の「電子政府・電子自治体戦略会議」で8月3日、サン・マイクロシステムズはJ2EEをベースとしたオープンな電子政府および自治体システムの構築こそが、e-Japanを加速することを強調した。

 セッションに先立って行われたプレスブリーフィングで末次朝彦常務・営業統括本部長は、「Javaで構築すれば、例えば、将来ハードウェアやOS、ミドルウェアを切り替えても、アプリケーションは使い続けられる。オープンの重要さはそこにある」と話した。

 しばしば「メインフレーム大国」と揶揄される日本だが、政府および自治体のIT環境も同様だ。日本市場のIT投資額は米国に次いで2位であるにもかかわらず、例えば、電子政府の進捗度は世界で11位にとどまる。特に住民や民間企業へのサービスという点では遅れが指摘されている。「e-Japan 2では、サービス提供が重要なテーマとなっているが、お金が回らないのが実態」と話すのは、サンでe-Japan営業開発本部長を務める中村彰二朗氏。ざっと7割のIT支出がメインフレームを中心とするレガシーシステムの保守に費やされているからだ。

 オープンは、技術的な恩恵ばかりではない。財源の確保に苦しむ地方自治体にとっては、民間企業以上にIT環境のコスト構造改革を迫られている。オープンの効果は、ブラックボックスをなくし、ベンダーへのロックインを避けられ、小さなプロジェクト単位で発注することも可能とする。「1円入札」のような、いびつな受注を防ぎ、地場の中小ソフトハウスにも参入の機会が生まれる。

 福岡県知事の麻生渡氏や宮城県知事の浅野史郎氏ら、改革派の知事が「地方からの構造改革」を掲げて旗揚げした地方分権研究会は、電子自治体化と地域の産業振興を結びつける。高コストのレガシーシステムにメスを入れ、オープン化によって地場の中小ソフトハウスにもシステム構築への参画を促そうというわけだ。サンは、オラクルや東芝らと共に地方分権研究会のワーキンググループにメンバーとして参加しており、札幌、仙台、大垣、福岡のJavaテクノロジーセンターを介して地域におけるJ2EEソフトウェア開発技術者の育成に貢献しているという。

 2003年12月には福岡県がJ2EEベースで開発したシステム基盤(開発フレームワーク)を宮城県が利用し、その上位のアプリケーションとして文書管理や電子決済のシステムを発注するなど、具体的な成果を出てきている。中村氏によれば、著作物であるシステム基盤やアプリケーションを地方自治体に帰属させ、複数の自治体がこれを使い回すこともできるようにしているという。J2EEでは、コンポーネント単位での開発やその再利用が可能で、システム基盤は福岡県、電子決済は宮城県、電子申請は熊本県、といった分担や、その後の追加開発や保守についても地場のソフトハウスを活用しやすい。

情報漏えいを防ぐSun Ray

 また自治体は、民間企業以上に情報漏えいに対する抜本的な対策を迫られている。

 サンでは「セキュアなモビリティ」を掲げ、Thinクライアントソリューションである「Sun Ray」を売り込んでいる。サーバで稼動するアプリケーションの画面をSun Rayにリダイレクトする仕組みで、端末側にデータを記憶するものは一切ない。究極の「ゼロ」クライアントともいえ、JavaCardを抜き差しすることによって、いつでもどこからでもシステムにアクセスできるモビリティだけでなく、その安全性や管理の簡素化が注目されている。地方自治体においても、就業モデルの改革が進んでおり、在宅勤務者などにその必要性は高いと中村氏は話す。

「Windows PCがオフィスに入ったことがそもそも間違い。ビジネス端末として、Sun RayとStarSuite(StarOffice)の組み合わせという選択肢も現実味を帯びてきている」(中村氏)

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