HPのデラフター氏、アダプティブ・エンタープライズ構想を語るInterview

2年目に入ったHPの「アダプティブ・エンタープライズ」構想について、同社管理ソフトウェア部門のトッド・デラフター副社長が語った。

» 2004年08月09日 18時35分 公開
[IDG Japan]
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 Hewlett-Packard(HP)の管理ソフトウェア部門のトッド・デラフター副社長兼ゼネラルマネジャーは先ごろ取材に応じ、「アダプティブ・エンタープライズ」構想と同社で呼ばれているオンデマンド戦略について語った。さらに同氏は、HPの競争相手について論評を加えるとともに、2005年秋に初開催が予定されているHP Technical User Conferenceについても説明した。同氏とのインタビューの抜粋を以下に掲載する。

―― アダプティブ・エンタープライズ構想を立ち上げた経緯、およびその中心的な狙いを聞かせてください。

デラフター アダプティブ・エンタープライズは、ITと業務をシンクロナイズさせるという方向に顧客を導く構想です。そこには、業務の変化に迅速に対応できるようにするという意味も含まれます。これは大胆な構想であり、その過程には多くの段階が存在します。また、ワンストップショッピングで実現されるものでもありません。

 HPがこの戦略を立ち上げて約2年になります。つまり、当社がCompaqを買収したころにスタートしたわけです。その当時、社内では、企業規模の巨大化に伴う課題や、システムと従業員の統合に伴う変化がありました。これは、ITシステムを維持するのにかかる費用という問題をめぐる議論に発展しました。

 構想開始当初、当社のIT予算の70%がシステムのメンテナンスに使われていました。この数字を逆転させるために、一連のステップを通じてIT部門の改革を実行したのです。1年目の目標は、メンテナンスに予算の45%、IT構想の発展のために55%を費やすことでした、現在は、メンテナンスに30%、新たな成長のために70%という目標に向けて進んでいます。われわれが社内で行っている取り組みから判断すれば、これは顧客にとっても達成可能な目標だと思います。

 アカウント数が23万にも上る電子メールシステムなどの巨大システムを扱う場合、プロセスの変更というのは重要な要素です。ITは1つのサービスとして見られています。ITサービスの管理およびITIL(Information Technology Infrastructure Library)標準の管理を通じて提供されるサービスなのです。ITILは欧州が主導する構想ですが、北米にも登場しました。

 まず、組織ビューを改良する段階があり、その次には、製品という視点から、業務とサービスの連携を進めるために実施すべき一連の作業があります。例えば、HP OpenView Service Desk製品では、システムのすべての構成情報が一元的に表示され、システムを隅々まで把握することが可能です。将来的には、当社の製品はすべて共通オブジェクトモデル方式を利用するようになります。その利点は、データを単一ビューで把握できることにあります。

 その次にくるのがサービス管理という段階です。これは、サービスをビジネスの推進力に結び付けるというニーズに対応することであり、これによりITインフラがどのような形でビジネスの成功を可能にしているのか、あるいは阻害しているのかが示されます。業界では多くの人々がこの目標について語っていますが、必ずしも達成されているわけではありません。

 ビジネスプロセスモデリングに対する当社のアプローチでは、顧客は世界各国のAccentureのような企業と共同でビジネスプロセスをモデル化し、われわれはこのプロセスの各段階がITインフラに依存していることを顧客に説明します。例えば、ある段階が失敗すれば、売り上げにどんな影響が生じるかを示すのです。

―― そこでBusiness Process Insightの出番となるわけですか?

デラフター われわれは6月にモントリオールでOpenView Business Process Insight(BPI)を発表し、Swisscomがこの製品を利用していることを明らかにしました。同社の環境にBPIを導入した結果、ビジネスプロセスに対するITのインパクトを2〜3日でモデル化することができました。同社はBPIを利用することにより、顧客のクレジット確認ができないケースが25%に上っているために、新規ユーザーがサービスを利用できるようになるまでに大幅な遅れが生じていたことを突き止めたのです。

 ITインフラをビジネスニーズに結び付けることができれば、ビジネスマネジャーがシステムをどのように修正すればよいのか理解するのに役立つ情報を提供できるようになります。そして次のステップは、これを自動的に実行することであり、そのためにサーバあるいはアプリケーションを利用するわけです。BPIの目標もそこにあります。まだだれもそこまで到達していませんが、われわれはそのレベルを目指したいと考えています。

―― HPの次期製品グループはどのように開発する方針ですか?

デラフター 自社開発でいくか、提携あるいは買収を通じて開発することになるでしょう。当社の買収計画に沿って既に6社の企業を買収しました。Talking Blocks、Baltimore Technologies、Trulogica、Novadigm、ConseraそしてPersist Technologiesです。

―― プロセスの自動化を目指すということですが、それが実現するのはいつですか?

デラフター 1年後ないし1年半後になる見込みです。もちろん今日の段階でも、HPはリソースの仮想化というコンセプトに基づくソリューションを提供しています。この狙いを実現するのが当社のUtility Data Center(UDC)製品です。これは、ストレージを仮想化し、ビジネスニーズの変化に応じてそれを再構成することを可能にするスケーラブルなハイエンドソリューションです。

―― UDCの狙いは何ですか?

デラフター UDCは当社が力を入れている製品であり、当社のロードマップにも載っています。この製品をさらに求めやすい価格にすることにより、より大きな顧客ベースに価値とメリットを提供したいと考えています。

―― オンデマンド製品をめぐるHPの取り組みは他社とどう違うのですか?

デラフター 当社とIBMの間には比較すべき点がたくさんあります。われわれは、管理ソフトウェアはIT分野の次のフロンティアだと考えています。実際、管理製品のベンダーも多数存在しますが、この分野に最も注力しているのが当社とIBMです。HPは強力なサービス部門とソフトウェアポートフォリオを持っています。その結果、当社とIBMの2強対決となっているのです。

 当社はソフトウェアとアーキテクチャの面で優位に立っていると思います。今後、当社にとって、Talking Blocksのサービス指向アーキテクチャ(SOA)が重要な役割を果たします。IBMはSOA分野では何も持っていませんが、われわれは現在、実際に製品を提供しています。

 メインフレームの管理に関して言えば、主要な問題は既に解決済みです。メインフレーム環境から引き出した情報を活用することは既に可能です。それよりも重要な問題はエンドツーエンドサービスの管理とモデリングであり、IBMはこの分野で遅れています。

―― HPのソフトウェアとハードウェアに関する技術セッションを1つにまとめた新しいカンファレンスを2005年9月に開催するという発表がありましたね。この新しいカンファレンスでの管理ソフトウェアの位置付けは、HP Software Forumと呼ばれる現行のカンファレンスの場合と異なるのですか。

デラフター Software User Forumは、対象となる参加者は非常に限定されており、OpenViewユーザーグループがスポンサーとなっています。このグループは主として、運用レベルで製品を使っているユーザーで構成されています。これらのユーザーの関心の対象は現行製品とその運用方法にあります。

 これに対して、新カンファレンスはCIOクラスの人々を対象とするという点でやや異なります。すなわち、ビジネス上の課題やアーキテクチャ革命に関心を持っている顧客が対象になるということです。CIOには、例えば米国企業改革法に対応するコンプライアンス責任者という役割があり、この役割は今後増大するでしょう。

―― Computerworldがこの春に実施した調査では、オンデマンドソフトウェアは特定のベンダーの製品に縛り付けるものではないかという不安をユーザーは表明していました。これについてはどう思いますか?

デラフター われわれは非常にヘテロジニアスな戦略を推進しています。OpenViewというネーミングそのものずばりです。顧客が自社のシステムで使っているものを重視しています。相互運用性についても自信があります。当社の戦略の中心となるのはビルディングブロックです。われわれはきっちりと適応(アダプト)することができます。



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