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» 2005年08月11日 20時37分 公開

GNUフリードキュメンテーションライセンスBeginner's Guide(2/2 ページ)

[Bruce-Byfield,japan.linux.com]
SourceForge.JP Magazine
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DebianからのFDL批判

 2001年11月以降、最も具体的なFDL批判をつづけてきたのがDebianプロジェクトである。FSFとは、長く、ときに辛辣な公開討論を重ねてきた。同プロジェクトの現在の公式態度は、「FDLは、Debian Free Software Guidelines(DFSG)に合致しない」というものである。DFSGは、Debianが各種ライセンスの妥当性を判断するときの判断基準となっている。

 名前から分かるとおり、DFSGはもともとソフトウェア用に作られたガイドラインだったが、現在では、Debianディストリビューションとともに出荷されるあらゆるものにこれが適用されるようになっている。Debianの現行リリースであるバージョン3.1には、FDLのもとで作成されたドキュメントも含まれているが、Debianプロジェクトリーダーのブランデン・ロビンソン(Branden Robinson)氏によると、次期リリースでは、FDLのもとでリリースされたすべてのドキュメントを削除させる計画だという。退役予定のドキュメントには、Free Software Foundationによってリリースされた多くのマニュアルが含まれており、GNU Compiler Collection用のドキュメントもその1つである。

 FDLに対してDebianが指摘する難点は、主として次の3点である。

  • セクション2に、FDLのもとでリリースされたドキュメントのコピーには、「妨害もしくは規制のための技術的手段」を適用してはならない、とある。これでは、ユーザはFDLドキュメントを暗号化して格納することができない、とDebianは言う。ファイルや、そのファイルを収めているドライブへのアクセスを制限することさえ禁止されかねない、とも言う。

  • セクション3は、不透明コピーに透明コピーを添えるよう要求している。これに対し、透明コピーは公的に入手できればよく、不透明コピーにいちいち添える必要はない、というのがDebianの立場である。

  • 不変部分も多くの問題の原因を引き起こす。訂正や更新ができず、できるのは加筆のみだというのでは、ドキュメントに不要なデータが溜まり、肥大化する一方になる。さらに、不変部分に含まれるのは2次的な内容ばかりだから、新しいドキュメントのソースとしても使えない。むしろ、不変部分が悪用される危険があって、そうなったらフリーライセンスの目的がくじかれると心配する人も、Debianメンバーの一部にはいる(ただ、不変部分に含むべき内容を明確に定義することで、そうした悪用は防げるようにも思われる)。

 Debianからの異議申し立ての中心には、不変部分の存在がある。DFSGには、「ライセンスは修正と派生作品を容認するものでなければならない」とあるのに、不変部分の存在はその原則を危うくしかねない、とDebianは言う。

 こうしたやりとりから、DebianとFSFがライセンス問題で犬猿の仲になったのではないかと一部では噂されているが、どちらのプロジェクトリーダーもそうした噂を一笑に付す。リチャード・ストールマン氏は、「Debianメンバーは基準を字面どおりに受け止めすぎる」と言いながらも、具体的なFDL批判への再反論は控えているし、ブランデン・ロビンソン氏も、「これは兄弟喧嘩のようなもの。いい関係なのに、そこへ余分な緊張を持ち込むのは気分がよくない」と言い、DebianとFSFの間では定期的に会合が持たれている、と強調する。この会合では、FDLの次期改定でDebianからの主張をどう取り入れるかが協議されており、「協力関係は実に密接で、満足している」とロビンソン氏は付け加える。

FDLの将来

 FDLの次期改定はGPLの第3版がリリースされてからになる、とストールマン氏は言う。そのGPLも、現行バージョンの執筆者であるストールマン氏とエベン・モグレン氏が、いまだ、第3版で取り組むべき問題点を関係者との協議で洗い出している段階である。とすれば、FDLの次期バージョンが形になるまでに少なくともまだ1年はかかるだろう。

 とりあえず、FDLの将来あるべき姿について、ストールマン氏が幾つかの考えを明らかにしている。1つの案として、不変部分や表紙テキストに関する条項を除いた修正バージョンも考えられる。「公正な使用」を明確に定義し、書評者やカタログ作成者がライセンス違反を心配せずにサンプルを使用できるようにすることも必要だ、とストールマン氏は言う。

 GPL/FDLのデュアルライセンスの可能性も探りたい、と同氏が言うのは、Debianからの批判を意識してのことかもしれない。ロビンソン氏はQtのデュアルライセンスを先例としてあげながら、デュアルライセンスなら、DebianのFDL批判がすべてクリアされる可能性があると言う。だが、ストールマン氏の言を待つまでもなく、2つのライセンス間の潜在的対立を解消し、デュアルライセンスに生じる抜け穴をすべて埋めるのは、相当な難事になるだろう。

 当面、ストールマン氏はFDLを「部分的成功」と評価している。フリードキュメントの必要性を認識し、より多くのドキュメントを万人の手に届かせようとする初めての試みだったという意味での、部分的成功である。「ドキュメントはまだまだ足りない」という彼の指摘は、まったく正しい。

Bruce Byfieldは講座設計者であり、講師でもある。また、コンピュータジャーナリストの顔を持ち、NewsForgeとLinux JournalのWebサイトに定期的に寄稿している。


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