「エンタープライズ分野へのR&D投資と“カイゼン”は怠らない」とデル会長

ダイレクトモデルでPC革命の寵児となったマイケル・デル会長は、「常に品質を高め、“カイゼン”していきたい。デル設立から20年以上が過ぎたが、それは変わらない」と話した。

» 2006年03月25日 00時37分 公開
[浅井英二,ITmedia]

 「ダイレクトモデルはデル成長の中核的な要因であり、これによって顧客からフィードバックを得ることができ、業界をリードする製品とサービスのポートフォリオが形成できている」── 1984年、わずか1000ドルの資金を元手にデルを設立し、「ダイレクト」という当時の業界には先例のないビジネスモデルでPC事業をスタートさせたマイケル・デル会長はこう振り返った。

PC革命の寵児となったデル氏も2004年には後継者に舵取りを託した。それでも、まだ41歳と若い

 3月24日、都内のホテルでプレス向けブリーフィングに臨んだデル氏は、今年1月末に締めた2006会計年度の売り上げが14%増の560億ドルに達しているとし、2009会計年度(2008年1月末締め)に年商800億ドルを目指す「売り上げ倍増計画」に向けて、同社の事業が好調に推移しているとの見方を示した。

 中でもサーバおよびストレージの事業やサービスの事業が好調で、「積極的なR&D投資を行っている」とデル氏は話す。かつては独自技術の牙城だったHPC(High Performance Computing)分野も今や業界標準のIAサーバが席巻しつつある。

 「HPC分野でも日本の高エネルギー加速器研究機構(KEK)に数千台規模で納入して実績を重ねるなど、サーバ事業は業界の平均を上回る成長を見せている」(デル氏)

 同席した浜田宏社長(4月末に退任予定)も、「2ウェイ、4ウェイのラックマウント型サーバの成長が著しい。ベンダー固有のUNIXサーバから業界標準技術への移行という潮流をデルがリードしている」と胸を張る。

 この3年間で19億ドルから50億ドルへと成長したサービス事業もデルの理念が反映され、それが強みとなっている。

 「サービスの定義は非常に幅広いが、われわれはアウトソーシングやデータセンターをやるわけではない。UNIXからLinuxへの移行やExchange Serverによる情報基盤構築、あるいはIAサーバによるHPCシステム構築などを支援する“インフラサービス”に注力している」とデル氏。

 標準化された技術をベースとしたインフラ構築の支援に特化することで、競合との差別化が図れるほか、サーバやストレージの製造と同様、サービス品質の改善も図りやすいといえる。

 「企業としての最高の可能性を追求する。デル設立から20年以上が過ぎたが、それは変わらない。常に品質を高め、“カイゼン”していきたい」(デル氏)

 デル氏は、まもなく同社が9世代目となるPowerEdgeサーバ群を投入することも示唆した。それらには、第2世代のデュアルコアXeonである「Dempsey」(コードネーム)や、さらに消費電力を下げつつ性能を向上させる「Woodcrest」(コードネーム)が搭載されるとみられている。

 今年初めには、「今度こそAMD採用?」との報道も流れたが、「Intelとは排他的な契約を結んでいるわけではないが、AMDとの契約について言及する段階にはない」とデル氏が話すとおり、今のところ具体的な動きはなさそうだ。

 なお、Microsoftが「Windows Vista」のコンシューマー向けリリースを当初予定の11月から2007年1月に延期することを明らかにしたことを記者から問われたが、デル氏は「新しいOSのリリース時期としては、もともと11月という時期は(年末商戦に)良くなかった。彼らの判断を歓迎する」としながらも、「そもそもDellの売り上げの85%は企業。その意味で今回の遅れがわれわれのビジネスに与えるインパクトはほとんどない」と話している。

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