オープンソースの輝ける未来は地方自治体がスクリプト言語を担ぐこと――OSDL平野氏激変! 地方自治体の現実(2/2 ページ)

» 2006年04月28日 08時30分 公開
[西尾泰三,ITmedia]
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地方自治体の生きる道はスクリプト言語にあり?

ITmedia 少し話を戻しますが、アジアで今後注目すべき国を挙げるとしたらどこでしょう。

平野 インドと中国に挟まれた地域、例えばタイやベトナム、インドネシア、マレーシアなどです。それと、東欧とロシアです。日本では話題になっていませんが、欧米各国はしっかりとこうした国々に目を向けています。逆にこうした国々からすると、日本はお呼びでない状況となっています。なぜなら日本はそうした国々にほとんど見向きもしていないように見えるからです。インドや中国への進出で欧米より出遅れたために市場シェアが低くなってしまったことをまた繰り返そうとしています。ITに関しては、国内では強いが、海外では弱い企業が多くなっている気がします。

 これだけ世界は絶え間なく変化しているにもかかわらず、世界がどうなっても日本だけは別のように思っているかのような傾向が日本、もしくは日本企業に見えることがあります。ただ、そう考えているのは日本だけで、海外はそう思っていないのです。

ITmedia VA Linuxの佐渡さんは以前、「日本はオープンソース界のガラパゴス」「日本政府はさっさとオープンソース振興から手を引いてしまえ」といったような発言をしていますが、これに似た意見でしょうか。

平野 日本政府としてオープンソースを支援するのは当たり前だと思います。振興することも問題ないでしょう。乱暴な言葉で言うと、問題なのは、そこに群がっていい人とそうでない人がいることではないでしょうか。

 日本の自治体では国産のシステム――ここではメインフレームに話を限定しますが――の導入率が非常に高いですよね。しかし、そうしたメインフレームを納入しているベンダーの国内シェアとグローバルシェアを見比べてみると、そのバランスの悪さは誰の目にも明らかなはずです。本来、冷静かつ客観的に評価して導入すべきであるのに、情報システムのあるべき姿を検討することなくこうした不思議な決定が下されている国、それが日本なのです。これはフェアな話ではないですよね。こういうことを繰り返すと、導入する側もされる側も短期的にはハッピーでしょうが、競争しない訳ですから、こうしたツケが必ず回ってくることを覚悟すべきでしょう。

ITmedia 例えば長崎県庁では、オープンソースの導入を積極的に行っています。こうした自治体も少なからず出てきていますが、このような動きをどう思いますか。

平野 まだまだ十分な成果が出ていないことは問題でしょうが、思い入れている自治体は多数存在していますよね。例えば九州では、福岡県はLinuxの技術者がそれなりに多いようですが、宮崎県や熊本県などでは絶対数が足りないと言われています。気持ちとしてはオープンソースを導入したくとも、人材がいない。仮にオープンソースソフトウェアでシステムを構築してもそのメンテナンスができない、だから涙をのんでプロプライエタリなソリューションを導入しているという現状があります。このようなことを回避するために、地方自治体の振興策に期待したいです。

ITmedia そうした状況を解決するにはどうすればよいでしょう。

平野 このことは、地場に一般的なエンジニアが定着していないという問題であって、オープンソースに限定した問題ではないはずです。それをもって「オープンソースはだめ」としてしまうとおかしな話になってしまいますよね。地方自治体の抱える根本的な問題を考えてみると、結局のところ、アメリカにおける州と比べた場合に、独立性や実力という点ではるかに劣っているからではないでしょうか。もちろん、国のレベルでもそこまで手が回っていないということはあるのかもしれませんが、地方自治体も自ら考え、自立する姿勢――姿勢だけでなく、その裏づけも――を見せていく必要があるでしょう。特にオープンソースの分野では情報が公平に入るという極めて有利なインフラな訳ですから、地方にとってはチャンスです。

ITmedia ITで地方自治体を活性化しようと思ったとき、どのような産業が有効でしょう。

平野 限られた世界でわざわざ難しい勝負を挑まなくとも、現実には、参入障壁が低く、かつ、市場からは求められているものは存在します。そこに注力すればよいのです。

 1つ例を挙げるなら、地方自治体はスクリプト言語を使った産業を速やかに支援すべきではないかと思います。もし、需要から考えて供給が極端に不足している、XML、Javaスクリプト、PHPやPhythonをまともに扱える技術者が100人、いや、10人いるような地場企業なら、それがどの県の企業であっても、確実に世界中が注目します。Ajaxやオープンソース版.NETであるMonoの技術者が何人かいただけで、MicrosoftやGoogleですら目を向けるでしょう。優秀な技術者を世界中から求めている企業にとって、その場所が青森県であるか鹿児島県であるかなどはさして問題ではないのです。宮城県にPHPの優秀な技術者を多数抱える地場企業があれば、楽天が野球以外で目を向けますよ(笑)。

 スクリプト言語が今後向かう道、それをWeb 2.0のような切り口で語るのではなく、オープンソースまたはオープンソースアーキテクチャーといった切り口で考えると、オープンソースの輝ける未来は地方自治体がスクリプト言語を担ぐことです、と言いたいですよ。

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