業務パッケージで済ませるか、ERPを導入するかは伸び盛りの中堅・中小企業の場合、判断が難しい。大塚商会のように、業務パッケージ、ERP両方の商材を扱っている会社は、顧客の状況によってはERPの担当者が業務パッケージを勧めるケースも出てくるようだ。
それはとりもなおさず、失敗導入を避けたいという考えが先立つからではないだろうか。どんな会社ならばERPに向いているのか、あるいは、業務パッケージに向いているのかというのは、ケースバイケースとしかいいようがない、というのが、ベンダーの本音だろう。
会社の規模が最も分かりやすい判断材料だが、従業員が100名程度の会社でも、独自開発の販売管理システムなどを構築していて、将来の成長を見込んでいる場合、一気にERPパッケージを導入するほうが、複雑な業務を切り回すのに適しているという判断もある。
また同レベルの企業でも、スタンドアロンの会計、販売管理システムを上手に使いこなしていて、さほど不都合は感じていない、という場合もある。ただし支社や支店が増え、海外にも営業所ができたので、ネットワーク対応版にしようかということで、バージョンを変えるケースもあるだろう。
もはや少数派に属するとは思うが、「とにかく実情を話せば、向こうがサジェスチョンをくれるだろう」と考え、どんなパッケージをどういう形で導入したいかを明確にしないまま、ベンダーやSI企業の担当者に相談を持ちかけるのは避けるべきだ。
ベンダーやSI企業も顧客側に明確な導入のビジョンがあればこそ、最適なアドバイスができる。
今回は「座礁しないERP」というタイトルで企画を進めてきた。「中堅・中小企業がERP導入に失敗しないためにはどうすればいいか」というのがそのテーマである。しかし、導入には失敗せず「座礁」は免れても、その後でつまずく危険がある。
ERPが経営情報を集約し、統合した後、そこから何を導き出し、経営(業務も含めて)にどう生かしていくか、という点で失敗すると導入の成果は半減する。
ERP導入後の最終目標は、「日次」で経営状態を把握するということだ。つまりほぼリアルタイムで正確な数字をはじき出し、次なる手を考える。それは極端だとしても、月次、週次で問題点をあぶり出し、経営を軌道修正するためにERPは使われる。統合された経営情報を使って効果的でスピーディーな経営が行われなければ、本当に活用されているとは言えない。現場スタッフの業務コストが軽減されるだけでは、まだ目標の半分も達成されていないと考えるべきなのだ。
「マネジメントのレベルを上げる」というのがERPの本来の目的。どのライバルよりも最小のコストで最大の成果を上げる、それができるのはマネジメントレベルの高い企業だけだ。これを最終目標とするなら、少なくとも安直な導入計画やツール選定などはするはずもないし、導入失敗のリスクは減るはずである。
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