管理部門スタッフの挑戦――「社風」まで変えたシステム改革アイティセレクト特選事例 東洋鋼鈑株式会社(3/3 ページ)

» 2006年12月26日 09時00分 公開
[アイティセレクト編集部]
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自社開発の取り組みは無駄だったか

 ここまでの取り組みをたどっていくと、当初の自社開発の取り組みを無駄な回り道だったと考えられなくもない。鈴木氏このことについて次のように語る。

 「負け惜しみでもなんでもなく、パッケージ導入のスピードに役立っています。回り道をしようと思ってしたわけではないので、結果論ととらえられかねないですが、自分でSQLサーバーの構築をしていたから、パッケージでの構築の際、的確に指示を出せたのだと思います。どういうシステムを作りたいのかを単純なイメージではない伝え方ができた。だから、何度も後戻りしながら構築するということを避けられたのです。無駄なアドオン開発をせずに済んだのもこうした取り組みがあったからだと思います」

 一から業務を見直しシステムを組み上げていく作業を担当者が経験していたからこその開発スピードだったというわけだ。また、東洋鋼鈑では一部、Webベースの社員情報検索システムなどをパッケージをベースに自社開発で構築しており、自社開発の経験・スキルがかなり活かされているという。

事業所、部門の壁を破る

 鈴木氏は開発当時、毎週必ず東京から山口県の工場まで出かけ、担当者と議論を重ねたという。議論を重ねた、といえば聞こえはいいが、かなり激しいやり取りもあったようだ。

 「かなり白熱したこともありました。やはり、長年使ってきて今でもしっかり安定して動いているものをどうして変えるのか、変えることによって新しい仕事が増えてしまうのではないか、そういう疑心暗鬼がどうしても出てきます。工場のシステム担当、人事担当、経理担当それぞれに納得してもらうのは並大抵のことではないんです」(鈴木氏)

 もちろん、工場の各担当者が特別頑固で保守的だということではない。それぞれの立場でリスクとメリットを天秤にかけて考えるわけだが、その計り方はそれぞれの立場によって違うのは当然といえば当然のことだ。

 しかし最終的には、シェアードサービスの取り組みも含めて、各方面が納得する形でプロジェクトは進んでいくことになる。鈴木さんとしても毎週山口県まで通った努力が報われたわけだ。

 「連結会計という流れが追い風になったことは大きいです。これを機会に全面的に変えなくて、いつ新しくするのか、という気持ちが多くの人の中にあったのだと思います。ただし、制度が変わるから、何も説明しなくてもみんなが納得してくれるということではないわけです」 確かに現場のヒアリング、調査に時間をかけたからこそ、議論が成り立ったということもいえるだろう。「本社管理部門主導」で全てうまくいくはずもない。制度改正という追い風と地道な努力、そしてシステムづくりに対する担当者の深い関わり、この三つがうまく作用して今回のシステム刷新の成功がある。

 「システム刷新がうまくいったということ以上に、社内で熱い議論が起こり、事業所、部門の壁が破られた、ということを評価されたことがうれしかったですね。このプロジェクトにかかわった全ての人に対する評価ということですから」。鈴木氏はそう言って、取材中で一番いい笑顔を見せてくれた。

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