「SaaSブーム」は日本にも「上陸」している。日本という特殊な市場では、SaaSに何が求められているのだろうか。
日本のベンチャーにも、SaaSを積極展開する企業がある。グループウェアの国内有力ベンダー、ネオジャパンだ。2006年9月、「desknet's」(デスクネッツ)シリーズの製品群および他社関連アプリケーションをSaaS型サービスで提供する「Applitus」(アプリタス)を発表し、オンデマンド市場へ本格参入を図った。
グループウェアや営業日報管理システムなどネオジャパンのパッケージ製品のほか、カスタマイズや受託開発にも対応する。他社関連アプリケーションとしては、提携パートナーであるデジタル・ナレッジのeラーニングシステム「ナレッジデリ」の提供を始めた。また、導入前の試用環境や20GBのサービス領域も用意している。
ネオジャパンによると、Applitusのメインターゲットは20〜200人程度の中小企業。導入コストを抑えつつ大企業並みのソリューションを構築できる点がメリットだという。
今後の日本でSaaSに求められることは何か――セールスフォース・ドットコムの日本法人代表取締役社長の宇陀栄次氏は、「地域性」が注目されるとみている。
これからは、CRMやSFAに“日本らしさ”が備わり、売上管理や収益管理の仕組みが日本の税制に合わせてローカライズされたアプリケーションへシームレスに連携していく。すると、顧客は、ベンダーではなく自社のビジネスに合ったサービスを選択する。SaaS事業者とも密接に連携するようになる――という。
また、宇陀氏は「大企業や中小企業の区別なく、個々の企業自身にとって最適なものを同じ条件で提供することにサービスの本質がある」と語る。IT業界は最先端を売りにする傾向があるが、ことサービスではほかの業界を謙虚に学ぶべきだと主張する。
「IT業界のサービスのバリエーションは極めて限定さているような感じが否めません。本当の意味でサービスを提供することが、今ようやく始まったばかりと見るべきでしょう」(宇陀氏)
SaaSが活用される分野は、コンプライアンスリスク対策が厳しく求められる世界でもある。営業が「アクセル」だとすればコンプライアンスは「ブレーキ」。従って、どちらかが極端に勝っていると、ビジネスが暴走あるいは萎縮し、経営においてバランスを欠くことになる。そのバランスが最も重視されるのが、オンデマンドが向いているといわれるフロントオフィス系の部分(1月19日の記事参照)だ。
オンデマンドCRMソリューション「Salesforce」の「ウインター'07」(1月15日の記事参照)では、攻めと守りの両方を重視する機能が追加された。宇陀氏は、スケーラビリティのダイナミックさと経営の質的な慣熟度を向上させると意気込む。「市場環境や制度の変化からのロジカルなリクエストでもあり、そんな顧客からの声をサービスに反映しているに過ぎません」(宇陀氏)
これからのビジネスでは、リスク対策に明確な妥当性を見出せなくても、素早く対応できることが重要になる。「ITの目的はコスト削減」といった、のんびりとした時代ではなくなっている。SaaSへの流れは、そんな要求を色濃く反映した正常進化といえるのだろう(「月刊アイティセレクト」1月号のトレンドフォーカス「オンデマンドの未来が再燃 SaaSはビジネス要求を取り込めるか?」を再編集した)。
※本文の内容は、特に断りのない限り2006年11月現在のもの。
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