第5回 無線LANの高速化におカネはかからない?再考・ワイヤレスネットワーク(3/3 ページ)

» 2007年05月22日 08時00分 公開
[池田冬彦,ITmedia]
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人が通過しただけで電波が止まる

 電波干渉の問題とともに、APの設置場所も重要な要因だ。設置のポイントは「見通しの良さ」である。ほとんどのクライアントからAPがよく見えている場所、遮へい物がない場所がベストポジションだ。2.4GHz帯の電波はかなりの高周波のため、直進性が高いからだ。金属製のロッカーや事務機器、パーティションなどは電波を遮へいする“犯人”になってしまう。

 また、AP設置時に注意すべきなのは「高い場所に設置すること」。ちょっとした盲点だが、人体は無線LANの電波を遮へいする。APを低い位置に設置していると、人がその前を通るたびに電波が弱くなるのだ。

 Wi-Fiの仕様では、電波が弱くなる(ノイズマージンが増える)と自動的にリンクアップ速度(54/48/36/24/18/12/9/6Mbps)を落としたり、電波が万一途切れても自動的に再接続する。このため、Webやメール、共有フォルダへのアクセス時には速度が遅くなったことに気が付かないのがほとんどだが、VoIP(Voice over IP)システムでは確実に通話が途切れがちになる。できるだけ高所に設置するよう心がけたい。

 このとき、APとのLAN配線が難しいから「WDS(Wireless Distribution System:ベースステーション間通信機能)」を使おうと考えるのは禁物だ。APの種類によっても異なるが、一般にWDSは配線工事が不要になる半面、AP間の通信がボトルネックになり、かえってスループットが落ちる危険性がある。

 さらに、無線LANシステムのリプレースを考えているなら、最新の無線LAN規格である「IEEE 802.11n(ドラフト2)」(関連記事1関連記事2)対応の機器を将来的に検討するのも手だ。APとクライアント間で複数のリンクを使って多重通信を行うため電波干渉に強く、AP/クライアント間の距離が離れてもスループットの落ち込みが小さいのがメリットだ。

 以上、お金をかけずにできる通信速度向上のためのアプローチを見てきたが、万事尽くしてもスループットが改善されない場合は、オフィス内ではなく、近隣の環境に問題があることが考えられる。この際は、SIerに依頼してアナライザによる厳密な調査を行うことも必要だろう。

スループット向上のアプローチ

  • APとクライアントはできるだけ見通しが良くなるように配置
  • クライアントとの距離を縮めるためAPを複数配置する
  • 複数のAPのチャンネル番号を最低2チャンネルは離してセッティングする
  • 隠れAPを排除する
  • Bluetoothなどの機器はできるだけ使わない
  • APをできるだけ高所に設置する
  • WDS機能は使わずAPを直接イーサネット接続する
  • リプレースなら802.11nの導入を検討する

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