また、高橋氏によると、各個人や組織が創造性を発揮するのを妨げるブロックが存在するという。個人も組織もそのブロックを認識することで、陥りがちな罠にはまることなく、より創造性を発揮しやすくなる。そのブロックとはどういうものなのだろうか。
(1)個人の2ブロック
個人のブロックの1つ目は「認知のブロック」だ。われわれの感覚器官はそもそも物事を選んで認知する。例えば満員電車での友人との会話は、騒音時でも相手の言葉を聞ける。ところが同じ状況をICレコーダーで録音した場合、騒音などで、友人の声を聞き分けることは困難、感覚は選択的に認知するのである。興味のあることしか覚えられないのも、この認知ブロックに当たる。仕事とはいえ、興味がわかなければ常にそのテーマを追いかけ、良いアイデアをうみだすことは不可能だ。
個人のブロックの2つ目は「知識のブロック」。知識は多いほど創造性は高まると考えがちだが、そこに罠が隠れている。知識は固定観念となり自由な発想を縛ることは多い。よく新発見・新発明をその道のプロではなく、素人が行うケースがある。知識や経験がない分、かえって自由に発想を飛躍できるからだ。知識や経験からくる自信がむしろ創造の妨げになることは多い。新しいアイデアが欲しい時、社内の専門家集団だけを集めるより、さまざまな部署のスタッフを集めて検討してみるというのも、良い企画を生み出すきっかけになる。
(2)組織の2ブロック
組織が抱えてしまうブロックの1つ目はいわずと知れた「人間関係のブロック」だ。人は人間関係を気にし、他人と違う言動はなるべくしないようにと、自主規制をしがちである。これは組織人には特に強く働く心理といえる。つまり自分の独自な意見を、われわれ自己主張の弱い日本人はあまり言おうとしない。創造型組織は、この物言わぬ各自の意識を払拭しない限り成り立つわけはないのである。中堅クラスになりつつある社員にこうした自己主張を控えるタイプが増えてくる。前述の「知識のブロック」と同様に、「異才の人」、「異端児」的な存在をあえて目立たせることで、他のスタッフの心理的なハードルを下げてやることも大切だろう。異端児の極端な意見にも真剣に耳を傾け、的確な指示を出しているのをみれば、「そんなアイデアでもいいのか」という反応が生まれる可能性が高い。
この場合、「異才の人」、「異端児」的な人自身が良い企画を連発すること求める必要はない。彼、彼女が触媒となって集団に化学反応を起こさせることが目的だ。
このことに関連するのが、「風土のブロック」だ。人々が創造性を発揮できるかどうか、個人の資質の問題もあるがむしろ組織風土の影響が大きい。組織が自由に何でも言えるような雰囲気を持っているか、それとも物言えば唇寒い雰囲気かどうか、リーダー次第で風土は大きく変わるものである。創造的な組織づくりはひとえにリーダーの肩にかかっているといえる。どんなアイデアに上司は強く反応するか、部下たちは意外と気にしているものだ。「傾向と対策」を準備してしまうわけである。意外性のある反応をするためにも、リーダーは自分に対する部下のイメージを把握して、その逆の反応をしてみるのも手だ。通常「異才の人」、「異端児」的な人はマネジャーにとって頭痛の種かもしれない。しかし、「わが社の社員」として規格に外れない人間だけで知恵を絞っていても創造性は高められない。「異才」「異端」も飲み込む度量があるかどうか、部下たちはそんなところにも注目している。
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