難航するSNSのビジネス利用、新たな道を探るWeekly Access Top10

ビジネスでSNSは使えないのか。医師しか入れないコミュニケーションサイトが4月1日に正式にサービスを開始した。

» 2008年04月12日 11時28分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 今週は、Microsoftの思惑通りには導入が進んでいないとするWindows Vistaについてのコラムが1位だった。そのMicrosoftが米国で昨年秋にFacebookというSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を提供するベンチャー企業に2億4000万ドルの投資をして話題になったことを取り上げた記事も上位に食い込んだ。

 SNSはビジネスでの利用がまだあまり進んでいないのが現状といえる。日本に目を向けても、ミクシィが提供する「mixi」のユーザーは1000万人を軽く超えるが、個人での利用が主流だ。

 ビジネスでSNSは使えないのか。この壁に立ち向かっている企業の1つが、東京・千代田区のキールネットワークスだ。同社の主な株主は米Intel、オリックスキャピタル、りそなキャピタルなど。CEOは日本ネットワーク・アプライアンスの社長も務めた鈴木康正氏。取締役には創業者兼代表取締役COOの櫻井智明氏、ファストサーチアンドトランスファーの徳末哲一氏などがいる。

 鈴木氏は、ビジネスでSNSを利用するためには「明確な目的意識を持つ人が健全に集える場所である必要がある」と話す。

日本シスコシステムズ、日本ネットワークアプライアンスといった通信企業を経てCEOに就任した鈴木社長

 同社は、SNS型のコミュニケーションプラットフォームとなる「nuco」(Neuro-extended Communication:ニューコ)を提供している。不特定多数の個人対個人のコミュニケーションツールとしてではなく、共通の目的や志向を持つ個人の間で、より緊密な情報交換や交流ができるという。ユーザー間でファイル、スケジュール、メッセージを共有したり、ECサイトと連携して製品やサービスのPRなどもできるようにしている。

 nucoが特に力を入れているのがセキュリティだ。会員管理を厳格化する工夫などにより、情報が不特定多数のユーザーに流れるのではなく、設定した会員間のみで共有できる仕組みを構築した。

 この機能を活用して、医療関連の情報提供を行うことを目的としたジャパン・メディカル・ソサエティ(JMS)が開業医を中心とした会員組織向けのコミュニケーションサイト「JMS Web」を構築し、4月1日に正式にサービスを開始した。医師が登録する「医籍登録番号」と呼ぶリストをチェックすることで、厳密に医師しか入れない仕組みにした。

 鈴木氏は「メンバーの最高齢は88歳。ビジネス向けに機能を提供すればシニア層にもこうしたサイトの潜在的なニーズがある」と話す。

 サイト上では、医師同士が情報交換したり、最新の医療情報の検索サービスなどが提供される。医師や看護師の採用支援、医療機関を経営する医師の事業継承や後継者探しなどの用途もある。

 サービスに登録した医師会員には個人ポータルが付与される。ポータル上で、関心のあるキーワードを登録しておくと、医療文献、医学論文、医療時事、医療イベントといった関連する最新情報を閲覧できるという。

 JMS Webには有償会員と無償会員の2種類がある。有償会員は、医療法人や準法人格の病院などだ。無償会員は、医師免許を持つ個人を対象としている。

 ビジネスでのSNS利用の道を探る上で、医師を対象にしたこうしたコミュニケーションサイトが1つのヒントになるかもしれない。

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