東京と大阪の「知識の分断」を解消する事例 ナレッジマネジメント(1/2 ページ)

住商情報システム(SCS)は個人が抱えるナレッジや情報を組織全体で共有できる体制作りを進め、製品やソリューションごとのテーマを中心としたコミュニティポータルに情報を集約した。

» 2008年05月01日 08時19分 公開
[ITmedia]

効果測定

分散していたナレッジの格納を1本化し、全社横断的な活用による業務効率UPを実現


導入前の課題

ロケーションごとに情報共有システムを構築していたため、ナレッジやノウハウが分散し、全社横断的な利活用がされることなく部門ごとに知識の差が生じていた。


導入後の効果

企業としての一体感や助け合い風土の醸成に向けた素地ができつつある。

他部門や過去のノウハウを参照できるようになったことで高付加価値なサービスの提供が可能に。


約3000名を対象とした統一基盤

 1969年に住商コンピュータサービスとして創業した住商情報システム(SCS)は、各産業向けアプリケーションソフトウェアの設計・開発やデータセンターにおけるシステムの運用・保守、自社開発パッケージソフトウェアの販売等を中心として発展。2005年に住商エレクトロニクスと合併し、情報システムに関るサービスをBest of Breedと呼べる組み合わせにてワンストップで提供する体制を整えた。自社開発のERP「ProActive」をはじめSAPやオラクルのサポートにも強みを持ち、米国・欧州・中国・アセアンに展開する拠点でグローバルなITサービスの提供やオフショアでのソフトウェア開発などを行っている。

 SCSは、個人が抱えるナレッジや情報を組織全体で共有できる体制作りに向け、リアルコムの情報共有基盤「REALCOM KnowledgeMarket」(以下、RKM)を全社導入し、約3000名を対象とした情報・ナレッジ共有の統一基盤を構築した。製品やソリューションごとのテーマを中心としたコミュニティポータルに情報を集約。各ポータルでは、技術分野や業務内容によってカテゴリを設け、Q&Aやドキュメント共有、プロジェクト推進、社内の専門家を探すKnow-Whoなどを用意した。

試験運用で効果を確認し全社一斉導入

 SCSでは、部署ごとに異なった情報共有システムを導入していたが、ロケーションごとにノウハウが分散していた問題を抱えていた。ERPソリューション事業部の西日本ビジネスソリューション部でシニアコンサルタントを務める吉田佳元氏は、「東京本社が持つ幅広い顧客に対するノウハウと、関西支社が独自にノーツ上で蓄積してきたナレッジとで相互活用があまりできておらず、それを何とか改善できないかと考えていました」と当時の状況を振り返る。

住商情報システム ERPソリューション事業部 西日本ビジネスソリューション部 シニアコンサルタント 吉田佳元氏

 全社横断的なナレッジ共有の仕組みがないばかりに知識の差が生じ、顧客に満足を与えることができないのは会社として不利益が大きい。ERPソリューション事業部ビジネスソリューション部のコンサルタントである山本雅一氏も、知識の分断は非常にもったいないと感じていたという。

 「そんな中、東京本社でナレッジマネジメントの構築計画が持ち上がりました。関西支社と本格的な検討に入り、全社展開を睨んだ試験運用を目的に部署単位で実施できるASP形式のサービスを探していたところ、リアルコムのRKMの存在を知りました。組織内の知識共有をしっかり考えて作り込んであるという印象を受けたことから、それを前提に導入検討を進めました」(山本氏)

 同社は2006年6月頃から、東京と大阪にまたがるERPソリューション事業部ビジネスソリューション部の200名を対象にRKMを先行導入して試験運用を開始。数カ月を経た時点で、個人に依存しない組織を超えたノウハウの共有や、問題解決のスピードアップ化による開発工数の削減で一定の効果が認められたため、2007年6月に全社一斉導入に踏み切った。

住商情報システム ERPソリューション事業部 ビジネスソリューション部 コンサルタント 山本雅一 氏

 グローバルソリューション事業部門ERPソリューション事業部でビジネスソリューション部長を務め、今回のRKM導入に尽力してきた城野尚子氏は、「ノウハウの拡散や、他部門との情報共有にメリットを感じていない組織では思うように導入が進められない面もありました」と語り、ナレッジマネジメント導入の難しさをにじませる。

 そこで城野氏は、RKMの全社推進責任者会議を立ち上げ、各事業部から責任者を出してもらい、その担当者の協力を得て普及を進める方法をとった。その結果、導入後の協力体制もスムーズに進んでいったという。「現在は情報漏えい防止やコンプライアンス順守の面で、顧客情報やプロジェクトの詳細を共有することは許されていません。若手や現場だけではなくトップマネジメント層にも活用を促していくには、それが今後の課題といえます」(城野氏)

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