1つには開発者の生活の安定でしょう。OSS開発にかまけていても生活に不安がなければ、心配することなく開発に没頭できます。特に経済的な側面で心配のないことが重要です。しかし、親の遺産を受け継ぐような運の良い話はめったにありませんし、ビジネス的に成功してお金持ちになった人は、今度はビジネスに対する責任からOSS開発どころではない人の方が多そうです。結局、これはあまり一般的に有効な方法ではなさそうですね。
もう1つの方法がマーケティングの利用です。商品ではないので「広報」と呼んだ方が良いのかもしれません。オープンソースは商品ではありませんから、売れなければならないというプレッシャーはありませんし、単純に考えればユーザーがどれほど増えても関係ないと思えます。しかし、ある程度以上のユーザーを獲得できれば、開発モチベーションの観点からも、コミュニティー形成の観点からも、大変有利です。また、LinuxやRubyのようにスポンサーによる支援*を受けるためには、そのプロジェクトが技術的に優れていることは当然として、「どれだけユーザーがいて、どれだけの影響力があるか」が重要になります。
近年、OSS分野のマーケティングにおける成功例としては、Ruby on Rails*(以下Rails)が挙げられるでしょう。RailsはWebアプリケーションフレームワークとして優れている点はもちろんですが、「Javaの10倍の生産性」という分かりやすいキャッチフレーズや「わずか10分でブログソフトを実装」という人目を引くビデオによって注目されました。「分かる人だけ分かれば良い」というようなテキストオンリーの無愛想なドキュメントが横行するOSS業界にあって、このアプローチは特異だったように思えます。
具体的には、
が重要のようです。Rubyのような言語はこれが苦手なので、ずっと困っていました。言語はプログラムを書けば原理的には何でもできるからです。差別化も難しいですし。しかし、Railsの成功のおかげで「RubyではRailsが使えます」といえるようになりました。最近、Rubyが注目されている原因*の1つはRailsでしょう。ありがたいことです。
これからはオープンソース分野においても、見栄えや広報などマーケティング的側面がますます重要視されるのかもしれません。
CMっぽくなるが、「ネットワーク応用通信研究所はRubyの開発を支援しています」。
Webアプリケーションフレームワーク。Rubyによる動的プログラムを活用した生産性に定評がある。
もう1つの原因は「開発者のヒゲ」ではないかと邪推している。一説によると、開発者がヒゲを生やしている言語は成功するらしい。
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