ユーザー側からの業務カイゼンを促がすSOA基盤Cosminexus V8 Review

Cosminexus(コズミネクサス)とは日立が提供するWebアプリケーションサーバやSOA基盤を総称するブランド名だ。先日発表されたV8で強化されたポイントを詳解する。

» 2008年10月14日 08時00分 公開
[友成文隆(日立製作所),ITmedia]

Cosminexusの製品体系

 Cosminexus V8(以下、V8)の開発コンセプトは「知識・ノウハウとシステムの融合」とされる。現在企業には、ビジネス環境の変化に対応するアジリティだけでなく、ビジネスイノベーションの実現(継続した成長)が求められている。これは、企業を支えるITシステムも同じである。

 このような状況を踏まえ、V8は「人、プロセス、情報」を統合し、多様な処理形態のシステムを構築・実行できる製品群として提供される。結果として、企業はビジネスを迅速にシステム化できるようになる。以下にその製品体系を示す。

V8の製品体系 V8の製品体系
カテゴリ 製品 概要
アプリケーション基盤 アプリケーションサーバ JavaEE5ベースのWebアプリケーションサーバ
TPモニタ オンライントランザクション処理基盤
バッチ処理 Javaアプリケーションのバッチ処理基盤
ストリーム処理 データをリアルタイム処理するストリーム処理基盤
ワークフロー処理 業務のワークフロー化を開発・運用する基盤
帳票出力 帳票を作成できる帳票システム構築支援ツール
コンテンツ管理 信頼性、可用性を高めたデータベースや文書管理製品からなる
プロセス統合基盤 ビジネスプロセス管理/ESB BPEL準拠のビジネスプロセス管理と、各種サービスをメッセージで連携するESB基盤
フロント統合基盤 業務ポータル 個人に依存した知識・ノウハウを業務手順としてシステム化
情報ポータル 各種サービスをポータル画面に統合するための基盤
情報統合基盤 フェデレーション/レプリケーション/ETL 散在するデータを収集・統合して、サービスを実行するために必要なデータを供給する基盤

アプリケーションサーバとしての機能と強化ポイント

  • 信頼性/可用性

 URL単位に設定できる流量制御により、高負荷時のスループットを安定させた。また、障害の検知機能と自律的な回復機能により信頼性・可用性を高めている。

 またV8 では、Javaアプリケーションの宿命ともいえるFull GC(GC=ガベージコレクション)による業務停止の解消を目指した。ユーザーはアプリケーションを変更することなく、アプリケーションサーバのバージョンアップだけで、このメリットを享受できる。

 従来のメモリ管理方式では、セッションオブジェクトに代表される長寿命のオブジェクトがJavaヒープのOld領域に滞留すると、メモリ領域の開放を行うFull GCが発生し、業務が停止してしまう。新方式では、長寿命のオブジェクトを独自管理してFull GCの発生を抑止している。

Full GC発生と抑制のメカニズム Full GC発生と抑制のメカニズム
  • 開発生産性の向上

 JavaEEアプリケーションの開発に必要なプラグインを備えたMyEclipseにより、ユーザーは統一された開発環境を利用できる。

  • 構築機能

 V8においては、実行環境や開発環境が1台のマシンで構成される基本的なシステムは、ウイザードにより対話形式で構築できる。また複数台のマシンで構成される実行環境は、定義ファイルを利用して一括構築できる。

  • テスト機能

 ブラウザからデータベースまでの一貫したトレースにより、性能チューニングやトラブル発生時の障害解析の容易化が図られている。

  • 運用機能

 日立の統合システム運用管理基盤JP1とV8の連携により、稼働状況の一元監視や運用の自動化が可能である。また、監査ログ機能やDBの監査証跡と連携し、コンプライアンス強化を支援する。

  • トラブルシュート機能

 V8では独自のトラブルシュート機能を強化したJava VMを提供する。障害発生時の適切なサポートが可能となる。

バッチ処理

 Javaバッチアプリケーションの実行高速化を図った。V8の実行基盤上では、JP1のジョブ管理機能との連携により、業務を自動実行できる。また、通常のJavaアプリケーションがそのまま使用できるため、既存のバッチプログラムからの移行も容易である。

 Javaでバッチ処理を行う場合、Java VM起動停止時の性能オーバーヘッドの問題があるが、本機能ではJava VMプロセスを常駐させ、問題解消を図った。また、コネクションプールの利用によるDBアクセスの高速化や、バッチ処理対象の表データをメモリ上に読み込んで処理する機能により、V8では従来と比較しバッチ処理時間を短縮している。

ストリーム処理(超高速トランザクション処理基盤)

 V8では、発生したデータをメモリ上で逐次処理することで、金融・製造・流通・交通などのビジネスの現場で大量に発生する「今」のデータの即時収集・解析を図り、リアルタイムなビジネスの意思決定を支援する。

ビジネスプロセス管理/ESB(エンタープライズサービスバス)

 BPEL2.0準拠のビジネスプロセス管理とサービス連携を実現するESBを備えたV8のプロセス統合基盤は、業務の流れに沿って複数のサービスを自動的に呼び出し、ワンストップサービスをもたらす。GUIによるビジネスプロセスの定義やデータ変換定義など開発環境も充実を図った。

プロセス統合基盤 プロセス統合基盤

業務ポータル(新製品)

 V8から、知識・ノウハウとシステムを融合し、業務品質を向上していくための業務ポータル製品が提供された。

 例えば本製品の利用により、電話を受けたコンタクトセンターでの対応手順などの個人の業務ノウハウを、フローチャートとガイダンスの組み合わせにより「見える化」し、業務品質を向上できる。また、プログラミングを行うことなく、Webブラウザ上で業務画面の作成・変更が行える。このため、開発時の手戻りが防止でき、稼働後の修正も可能だ。

 またオペレーションログを基に業務の分析を行い改善することで、業務アプリケーションのユーザービリティを向上し、新たな知識・ノウハウの創出を目指す。

現場知とシステムの橋渡し 現場知とシステムの橋渡し

 V8の強化点の1つにJavaアプリケーションの“Stop The World(一定時間応答のない状態)”を防ぐ技術の採用がある。次回から2回にわたり、Javaにおけるメモリ管理方式の仕組み、その問題点、そしてV8がどのようにしてこの問題の解決を図っているかについて、詳しく解説したい。

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