アプリ開発者を呼び込むAndroid搭載端末Trend Insight(2/2 ページ)

» 2009年01月08日 00時00分 公開
[Nathan Willis,SourceForge.JP Magazine]
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ほぼフリーな端末

 フリーソフトウェア信者が本当に求めているのは、ファームウェアからアプリケーションに至るすべてのソースコードが提供され、所有者が何の制限も受けずに心ゆくまでカスタマイズできる、完全にオープンな携帯端末だ。しかし、G1はそのレベルには達していない。とはいえ、かけ離れているわけでもない。気の早いハッカーたちは、G1が発売されて間もなく、ジェイルブレイク(端末の制限解除)の方法を発見した。ターミナルエミュレータをインストールし、コマンドラインからtelnetdを起動すると、Telnetデーモンがrootで実行されるので、Android MarketのTelnetアプリケーションを利用するか、同じLANの別のコンピュータからこのデーモンに接続して、例えば端末側のファイルシステムを読み取り/書き込み可能な形で再マウントしてやれば、端末メーカーのかけた制限から開放される。

 こうしたジェイルブレイクの方法が明らかになってすぐに、G1にかんするハックが大量に編み出されたわけではない。ほとんどは単純な設定変更で、端末のメモリを節約するためにアプリケーション領域やブラウザキャッシュをmicroSDカードに移すものだった。中にはOSをDebianに入れ替えるといった手の込んだものもあったが、やがてそうしたハックもそれほど重要な意味を持たなくなった。数週間後には、Googleがこのtelnetdのセキュリティホールを修正したファームウェアアップデートをリリースしたからだ。ファームウェアアップデートは携帯回線を通じてバックグラウンドでダウンロードされ、ダウンロード完了後はインストールを促すメッセージが数分おきに表示される。

 T-Mobileからレビュー用に借り受けた端末にもファームウェアアップデートがダウンロードされていたが、わたしはあえてそのインストールを行わなかった。セキュリティホールが公表されて数週間後に届いた端末だったが、案の定、telnetdを利用した制限解除の方法がまだ使えた。ただし、シェルがroot権限で起動することを確認しただけで、それ以上のことは行わなかった。

 皮肉なことに、T-Mobileからレビュー用端末の返却要請があった翌日、Googleが類似の端末ながらもより制限の緩いAndroid Dev Phone 1を発表した。このDev Phone 1は、G1と同じハードウェアを使用しているが、SIMおよびブートローダのロックが外されており、任意のサービスプロバイダーで利用したり、独自のカスタムシステムイメージをインストールしたりできる。価格は399ドル(G1端末の本体価格と同じ)だが、Android開発者の登録料として別途25ドルをGoogleに支払う必要がある(表向きはGoogleを将来の破産から救済するのに使われることになっている)。Dev Phone 1の方は、購入者が自己責任で利用する端末という位置づけである。

Androidの効果

 結局のところ、G1の重要性は、ユーザーがこの端末に何を期待するかによって変わってくる。きちんとした携帯電話あるいはLinuxベースのそうした端末を求めるなら、G1を選べばよい。「フリーソフトウェア」ベースのスマートフォンを求めるなら、Dev Phone 1を選ぶべきだろう。

 Androidにかんする最大の疑問は、このプラットフォームが携帯電話市場にどんな影響を与えるかだ。G1を試用しただけなのではっきりしたことはいえないが、スマートフォン向けプラットフォームの成否を決めるのは端末でも用意されているサービスでもなく、サードパーティーアプリケーションのコミュニティーではないだろうか。その意味ではAndroidのやり方は順当といえる。これまでわたしはOpenmokoプロジェクトの活動に注目してきたが、その中心にあるのは下位レベルの携帯電話向けOSの開発であり、サードパーティーアプリケーションに対する取り組みはほとんど見られない。AndroidのSDKやAPI、純粋なJavaではない開発スキームには異論もあるだろうが、このプラットフォームには多くの開発者が関心を寄せており、オープンソースのライセンシングに魅力を感じている人も大勢いる。これはAndroidの大きな強みである。というのも、FOSSコミュニティーが力になれる領域があるとすれば、アプリケーション開発だからだ。

 Maemo開発者のヘンリ・バーガス氏は、NokiaのNシリーズ端末とAppleのiPhoneの双方での開発経験を比較して、「Nokia端末のインストール済みアプリケーションが何かを作り出すこと(動画の撮影、写真やブログなどの共有)を促すものであるのに対し、Appleのプラットフォームは消費(楽曲やゲーム、アプリケーションの購入)を促すものになっている」という趣旨のことをブログに書いている。これまでのところ、Androidはユーザーによる開発を助長するプラットフォームといえる。そこが大きな差異化のポイントになりそうだ。

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