技術者版「AIDMA」でエンジニアーズ・ハイを感じよう「ひらめき力」を向上させよ(1/4 ページ)

エンジニアの「ひらめき」は世の中を変えるインパクトを持つ。だが一朝一夕でひらめくようにはならない。「ひらめき力」をのばすためには、日頃から「AIDMA」を意識しておくといい。

» 2009年05月22日 09時12分 公開
[山口陽平(みずほ情報総研),ITmedia]

 今年に入り、新人エンジニアとして仕事のキャリアを開始した人も多いはずだ。では、ここで改めて問いたい。エンジニアとはどのような仕事をするのか。そしてどういった能力が必要とされるのか。この質問に答える前に、簡単な問題を紹介しよう。

Question

ここに1本の重さが約10グラムのソーセージが大量にある。ソーセージ1本ずつの重さは均一でなく、8.5グラムや11.3グラムのようにばらつきがある。このソーセージを何本か組み合わせて100グラムずつ袋に詰めるにはどうすればいいか。世の中の商品と同様に100グラムに満たない袋を出すと苦情が出るが、100グラムを上回ることは問題ない。また、計量の時間を短くしつつ、できるだけ100グラムに近づけると儲けが増える。このとき、正確な計量をするにはどのような仕組みを作ればいいか。


 実はこういった仕組みの計量器は実際に存在する。何年か前にわたしが見た機械は以下のものだ。

計量器の仕組み 計量器の仕組み

1. グループA:ソーセージを無作為に集めて90グラム前後にする。これを20セット用意する。ここでは精度は気にしない。

2. グループB:ソーセージを1本ずつ20セット用意する。これも無作為に行う。

3. 約90グラムのグループAは規定重量である100グラムまで10グラム前後の不足がある。そこでグループBの中からちょうど100グラムの組み合わせになりそうな相手を選んで組み合わせを作っていく。


 100グラムになる組み合わせが出尽くしたらグループA、グループBにソーセージを補充する。そして5回、10回と組み合わせ作業を繰り返しても100グラムに近づかないセットは山に戻す――こういった仕組みだった。処理性能を高めたい場合は、許容する重量の上限範囲を105グラムにしてマッチングしやすいようにすればいい。歩留まりを良くする場合は、リセットを数多く発生させながら、100グラムぎりぎりになる組み合わせを探すようにする。

 よりシンプルな方法もある。100グラムを超えるまでソーセージを集め、105グラムを上回ったらすべてを山に戻してやり直すといったやり方だ。これはソーセージの重さのばらつきが10グラム付近に収まっていれば効率的だが、重量の分散が大きい場合にはリセット回数が増え、歩留まりが悪化してしまう。

 できるだけ100グラムに近い袋詰めが必要な場合は、ソーセージを1000個取り出してすべての重量を計測することも考えられる。多量のソーセージからできるだけ100グラムに近い組み合わせを計算し、取り尽くしていくような方法も考えられるだろう。その場合はソーセージを選ぶ機械的な動作をどうするかが懸念事項になる。ベルトコンベヤーを使った宅配便の荷物仕分けシステムに近い形態がいいかもしれない。


 このように、ある課題に対して自然法則を利用した解決策を提供することをエンジニアリングという。冒頭に質問した「エンジニア」の仕事とはエンジニアリングを担うことである。

 上記の例では、機械が効率的な計量をするために、数学的な考え方が用いられている。計量器を円上に配置することで、機械を効率的に動かすことができる。無駄な動力を出さないために、2種類の計量器を上下に並べ、完成したセットを重力で自然落下させることもできる。この際、機械の原価を抑えたり、故障を少なくしたりすることも、解決すべき課題だ。

 さて、みなさんはこの質問に対してどう考えただろうか。

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