技術者版「AIDMA」でエンジニアーズ・ハイを感じよう「ひらめき力」を向上させよ(2/4 ページ)

» 2009年05月22日 09時12分 公開
[山口陽平(みずほ情報総研),ITmedia]

エンジニアとして求められる3つの能力

 みなさんはこの質問に対して、ここで挙がらなかった解決方法を考えたり、「これは仕事で使える」とメモを取ったり、計量器メーカーのサイトで実際の機械を探したり……などさまざまな行動を起こしたはずだ。情報システム系のエンジニアの方は、ソーセージを生成する機械をシミュレートするコードを書いて、最適なロジックを探したかもしれない。機械系のエンジニアなの方は、動力装置やセンサーの配置を工夫しようとしたかもしれない。

エンジニアに求められる3つの能力 エンジニアに求められる3つの能力

 このように、課題に対して思考を働かせることは、エンジニアの成長と密接に関係する。

 エンジニアとして成長するには、3つの能力を伸ばす必要がある。それは、(1)文書化や進ちょく管理などエンジニアリングを支える基礎技術、(2)設計やプログラミングなどの専門技術、(3)問題解決能力――である。

 企業などの組織でエンジニアリングを行うには、基礎技術と専門技術の能力に長けている必要がある。複数の人数でものづくりをするには、「技術力」があることが不可欠だからだ。また、大規模なものづくりでは、ある人が書いた設計図に沿ってプログラミングやテストの担当が分かれる。自分だけが技術力を発揮しても、プロジェクトは進まない。ここで、他人に技術力を発揮してもらうためのマネジメント能力も必要になる。基礎/専門技術は体系的な学習で向上させることが可能だ。

 では問題解決能力はどうか。世の中には直感や発想などが関連する「ひらめき」に依存するような問題が数多く存在する。これを解決するための能力は、学習を積み重ねたり他人から教わったりしたことで身につくほど単純なものではない

ひらめきをもたらす技術者版「AIDMA」

 では、それを伸ばすために何をすればいいのか。日本の技術力の結晶と言われる新幹線を例に考えてみよう。新幹線は高速運転が売りだが、走行する上で起こる騒音は大きな問題だ。ここでひらめきの能力が騒音問題を解消した。

500系電車の屋根上にある「パンタグラフ」が騒音の原因になっていた 電線から電気を供給するために500系電車の屋根上に設置している「パンタグラフ」。これが出っ張っていることで空気抵抗が増し、騒音の原因になっていた(出典:ジャパン・フォー・サステナビリティ)

 500系新幹線では、騒音を小さくするためにフクロウやカワセミの羽根からヒントを得た部品を採用している。フクロウの羽の特徴を分析して、新幹線の速度と大きさにスケールを修正して適用しているという。この仕組みを実現するにはさまざまな技術が要求されるが、それ以上にハードルが高いのは、フクロウやカワセミの羽に着眼するという視点だ。羽の仕組みから走行音をやわらげるという着想にたどりつくには、「フクロウが飛ぶ時の羽音が静かである」ということを知らなければいけない。これを知らなかった場合は、騒音解消に多大な時間と失敗を積み重ねることになったのではないか。

 このように課題の解決策には、身近な自然現象や法則が発想の材料になることが多い。発想の材料を幅広く集めれば、発想力が向上し、ひらめきに結びつく。この「発想の引き出し」を新人のうちに準備しておくことは、今後のエンジニアとしてのキャリアにも必ず生きてくる。普段から身の回りの面白いことに耳を傾け、注意を払ってみてほしい。

 以下の表は、ひらめきを生み出すための考え方と行動を、マーケティング用語の「AIDMA」になぞらえて紹介したものだ。

1. Attention(注意) 面白いものを探す

2. Interest(関心) 見つけたものに興味を持つ

3. Desire(欲求) 真実を求めて考えたり調べたりする

4. Memory(記憶) その過程を記憶しておく

5. Action(行動) 困った人を助けるために使う


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