このように、身近な刺激を探求し、応用方法を考えたり、長所短所を分析したりすることに喜びを感じる人は少なくない。エンジニアが体験するこの種の知的な高揚感を、長時間走り続けることで気持ちが高揚する「ランナーズ・ハイ」という作用になぞらえて、「エンジニアーズ・ハイ」と呼ぶことにする。新人エンジニアにはこのエンジニアーズ・ハイをたくさん経験して欲しい。
発明家のエジソンの言葉に「天才は1%のひらめきと99%の汗」というものがある。実はこれは「1%のひらめきがなければ99%の努力は無駄である」というニュアンスが正しいそうだ。今日のエンジニアリングもこれと類似している。ほんの些細なひらめきでも、実現に至るまでには数多くの技術の積み重ねが必要である。またどれだけ技術を積み重ねても、ひらめきがなければ解決できない問題は数多く存在する。
データベース設計やプログラミングの技術力は、開発を重ねることで向上する。しかし、ひらめきを生み出すためにいくら材料探しを積み重ねても、成長が目に見えない場合が多い。ひらめきのために蓄えておいた素材の多くは日の目を見る機会がないだろうし、一度もひらめきを感じることがないままエンジニアのキャリアを卒業してしまうかもしれない。
しかし、今まで誰もひらめかなかったことを自分が世界で一番にひらめいたとしたら、それは世の中を変えるインパクトを持つ可能性がある。そうしたことが起こりうる場面に常に接していられるのがエンジニアの仕事の醍醐味だ。新人エンジニアのみなさんは、世界が変わるその瞬間を夢見て、森羅万象に興味を持ち、エンジニアーズ・ハイを感じ続けてくれると嬉しい。
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