Microsoftの「Security Essentials」は企業ユーザーを悩ませるか?注目の無料セキュリティサービス(2/2 ページ)

» 2009年06月23日 16時37分 公開
[Don Reisinger,eWEEK]
eWEEK
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 企業市場では、セキュリティがますます重要になっている。企業各社は、自社のネットワークがWindowsコンピュータを狙ったマルウェアの影響を受けないようにするためにさまざまな対策を講じている。そして企業ユーザーがWindowsのセキュリティ問題にうんざりして、ほかのプラットフォームに乗り換える可能性も常に存在する。もちろんそれは、Appleが企業向けソフトウェア開発者と良好な関係を築けることが前提になるわけだが。

 企業ユーザーは次のような質問を投げ掛け始めるかもしれない――「Microsoftはなぜ自社のOSをユーザーが安全に使えるようにするのに、セキュリティスイートを別途リリースする必要があるのだろうか?」「Microsoftがセキュリティソフトウェアをリリースする必要がないくらいWindowsがセキュアでないのはなぜか?」「Appleは自社のOSとは別途にセキュリティソフトウェアを提供していない。Linuxではセキュリティ問題は存在しないに等しい。これはどういうことなのだろう? なぜMicrosoftだけが特別なのだろうか?」

 MicrosoftはSecurity Essentialsをリリースすることで、自らを困難な立場に追い込むことになる。確かに「当社の顧客を守ろうとしているのだ」と主張することはできる。しかしその一方で、自社のOSが十分セキュアでないため、セキュリティを実用レベルに高めるには追加ソフトウェアが必要であることを認めていることでもある。多くのコンシューマーはそのことに気付かないかもしれないので、Microsoftはこの市場ではそれほど心配しなくてもいいだろう。しかし企業市場はどうだろうか。Microsoft Security Essentialsの本質は、ソフトウェアとしてパッケージされたセキュリティアップデートであることを企業ユーザーが見抜き、Windows以外の選択肢を検討し始めるのは、それほど先のことではないかもしれない。

 もちろん、企業ユーザーにとってはセキュリティ以外にも考慮すべき問題がある。互換性を検討する必要もあれば、従業員の生産性についても心配しなければならない。しかしWindows以外のプラットフォームに移行するのは不可能だとは言い切れない。企業は長い間、MicrosoftのWindowsアップデートに従ってきた。MicrosoftがWindowsの新バージョンをいつリリースしようとも、企業の世界では機器をアップグレードするのが当たり前のようになった。しかしそこに登場したのがVistaだ。そして何年にもわたってMicrosoftに高い利益率をもたらしてきた原則が突然、崩壊したのだ。企業はVistaに移行しないことを決め、Windows XPにとどまることを選択した。これはMicrosoftにとって大きな打撃だった。

 Microsoft Security EssentialsはVistaの二の舞になるのだろうか、あるいは企業がWindows以外の選択肢を検討する契機になるのだろうかといえば、その可能性は低そうだ。OneCareはかなり以前から提供されているが、企業ユーザーが大挙してほかのプラットフォームに乗り換えるという事態は起きていない。企業はそういったことをあまり気にしていないのかもしれない。

 いずれにせよ、1つだけ確かなことがある。それは、MicrosoftがSecurity Essentialsをリリースすることによって批判を招く可能性があるということだ。それと同時に、このソフトウェアはWindowsのセキュリティの改善につながる可能性もある。つまり、これはリスクなのだ。しかし冒すだけの価値のあるリスクかもしれない。

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