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キーワードは「エージェントレス」――仮想環境の稼働監視JP1 V9 Review

システム構成の柔軟な変更が前提となる、仮想環境におけるアベイラビリティ管理を効率化するためには、エージェントレスでの監視が可能か否かがポイントだ。

» 2009年08月10日 08時00分 公開
[友成文隆(日立製作所),ITmedia]

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アベイラビリティ管理とは

 JP1のアベイラビリティ管理はシステム全体の稼働状況を「見る」モニタリングを構成する製品群だ。アベイラビリティ管理は、ITシステムを構成するインターネットサービス、OS、各種アプリケーション、仮想環境などの稼働情報をプラットフォームとアプリケーションの両面から収集し、これらを一元管理して横断的に分析することで、問題の早期検知から特定、さらには将来のキャパシティプランニングまで、安定したシステム運用を実現するものとなる。

 サーバの高性能化と仮想化技術の進展により、システムの集約が進み、集中運用が加速される。その中でJP1 V9のアベイラビリティ管理は、仮想環境への対応に加え、運用性、操作性の改善を図った。今回解説するのは、エージェントレス方式での稼働監視についてである。

稼働管理の重要性

 業務で必要となるOSやミドルウェア、そしてアプリケーションが効率よく稼働し続けるためには、サーバを最適にチューニングしなければならない。さらに、何らかの原因でシステムが滞り始めたとき、それをいち早く検知してボトルネックとなっている部分を特定し、原因を取り除く必要がある。アベイラビリティ管理は、この問題解決をアシストする。具体的には、各サーバの稼働情報を収集し、収集した稼働情報を監視サーバで一元管理し、トラブルの予兆を検知する監視と、突発的に発生した問題を効率よく解決するトラブルシューティングをアシストする。さらに、長期間の情報収集から得られるリポートによって、将来的なサーバ増減計画に役立てられる。

仮想環境での稼働管理の課題

 従来は、サーバを個別にチューニングしていればよかったが、仮想化によって集約された環境では、仮想環境全体のバランスを見てチューニングしなければならない。しかし仮想環境では、CPUやメモリといったリソースが共用されるため、チューニングは複雑で難易度の高い作業である。 しかも、チューニングは、1回限りの作業ではない。なぜなら仮想化環境の場合、柔軟にサーバ構成を変更できるからだ。せっかくチューニングを施しても、仮想サーバを増やしたり、仮想サーバの能力比率を変更したりすれば、意味を失ってしまう。また、従来個々のサーバで動作していたシステムを、一度に仮想環境に移すことはまれであり、リスクヘッジのため順次移行するのが一般的である。

 そこで問題となるのが、監視エージェントの存在だ。仮想環境にエージェントを配置すれば、詳細な稼働情報を取れたり、ネットワークに障害があって監視サーバからアクセスできない間もエージェント側でサーバ情報を収集しておき、後から分析できたりと、メリットも多い。しかし、仮想マシンの数が増減する環境では、エージェントの配置に伴うシステム停止や再起動などの作業が、運用上のネックになる。そこで、今回新たに登場したのが、エージェントレス方式での稼働監視である。

エージェントレス方式での稼働監視

 既存サーバを仮想化技術で統合する際は、個々のサーバがどの程度リソースを占有しているか、ピークはどの時間帯なのかを把握する必要がある。JP1 V9から、簡易的な情報はエージェントレスで収集できるようになったため、マシン構成を変更してすぐに監視できるようになった。加えて個々のサーバにエージェントを配置しなくても稼働状況を把握できるため、システム環境の変化に伴うリスク回避と運用管理者の負担軽減につながる。

エージェント方式とエージェントレス方式 エージェント方式とエージェントレス方式

 エージェントレスの稼働状況管理で監視可能な、主な項目は次の通りであり、物理サーバだけではなく、個々に割り当てられた仮想マシンにも適用できる。

分類 主な監視項目
プラットフォーム CPU、メモリ、ディスクの使用状況、ディスクアクセス状況、ネットワークデータ転送量および使用状況
Oracle DB データベース使用率、テーブルスペースのフラグメンテーション、テーブルスペース情報、Oracleインスタンス稼働監視、キャッシュヒット率、ロック発生情報、SQLテキスト
SQL Server SQLインスタンス稼働監視、データベーススペース使用状況、キャッシュヒット率、ロック発生情報

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