Windows 7の経済効果Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2009年09月07日 09時06分 公開
[松岡功ITmedia]
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Windows 7に課せられた新たな役割

 2兆3000億円 ―― 驚くべき経済効果である。しかし、Windows 7のポテンシャルはこれくらいあると筆者も感じる。

 実際に企業ユーザーからは、「クライアントOSとしてWindows XPを使い続けるのは、そろそろ限界」との声が高まっている。その意味では、Windows 7は初めから「成功を約束されたOS」と言っていい。

 さらに長い目でみれば、Windows 7の経済効果は一層大きなものになるかもしれない。それはWindows 7がこれから担う役割が変化してくるとみられるからだ。

 Windows 7は、当然ながらWindows文化を継承している。その意味では、企業ユースからいえばIT分野で過去20年間続いてきたクライアント/サーバモデル、すなわち分散コンピューティングのクライアントOSとしての素地を持ち続けている。

 しかし一方で、マイクロソフトは今回、Windows 7に新たな役割を持たせている。クラウドコンピューティングの受け皿という役割である。これからサービスが本格化するWindows Liveとの連携機能が、その一例だ。さらに今後はブラウザ機能と相まって、企業向けにもさまざまなクラウドサービスとの連携が図られるだろう。

 つまり、Windows 7は、分散コンピューティングからクラウドコンピューティングへとITの仕組みが大きくシフトする転換点に誕生した「端末OS」なのである。したがって、Windows 7はマイクロソフトのクラウド事業戦略にも大きな影響を及ぼす。今後の経済効果でいえば、成功を約束されたOS通りWindows 7が普及すれば、それはクラウドサービスをも包含した規模になりうる。

 ただ、この先には強力なライバルになるとみられる存在がある。ブラウザと一体化した「Chrome OS」の投入を発表したグーグルだ。果たしてマイクロソフトはグーグルの市場参入をはねのけ、Windows 7を起点にクラウド連携Windowsの牙城を築き上げていくことができるか。それによって経済効果のほどは大きく変わってくる。

 と、経済効果の話のつもりが、ついバトルの話になってしまいがちだが、Windows 7にはまず、ぜひともIT市場を活性化させ、厳しい経済情勢の流れを変えるくらいのパワーを発揮してほしい。

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プロフィール

まつおか・いさお ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


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