クラウドとオンプレミス連携の利点と課題Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2009年11月30日 08時52分 公開
[松岡功ITmedia]
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待たれる両環境連携の効果的な活用法

 BI機能については、一般の社員でも容易にさまざまなデータソースを自由に加工し分析できるセルフサービスBI機能「PowerPivot」を装備した。

 PowerPivotはMicrosoft Office Excel 2010に完全に統合され、インメモリに圧縮された多次元データベースを持つことにより、大量データをデスクトップで超高速に分析することが可能。また、作成された分析ワークブックはMicrosoft SharePoint 2010と連携し、全社員と共有することができるとしている。

 新たなデータベースの利用環境において、クラウドとオンプレミスの連携を提案したことについて、五十嵐氏はユーザーの視点から、その利点をこう説いた。

 「この先10年、IT投資をオンプレミスに継続して行うのか、それともクラウドを利用してシステムを展開していくのか。その際にどの技術を採用して、どのようなアプリケーションを構築していくのか。そう簡単に決めることができないのが現状だ。その点、マイクロソフトのSQLならば、両方の環境において同じ技術を活用できるので、今の投資を確実に生かしていくことができる」

 このメッセージは、非常に明快だ。ただ、説明をずっと聞いていて、ピンと来ないことがあった。クラウドとオンプレミスの連携によって、実際の業務として具体的にどんな効果的な活用法があるのか、だ。

 今回の新たな提案が、オンプレミスからクラウドへのシフトを促すものならば分かりやすいかもしれないが、それは「ソフトウェア+サービス」をコンセプトに両環境の併用を推進するマイクロソフトの意思ではない。

 説明会では、デモンストレーションとして、SQL管理サーバからクラウド上のSQL Azureと企業内データセンターにあるSQL Serverの両方に接続し、画面上からはクラウドかオンプレミスかを意識せずに管理できることをアピールしていたが、それも機能説明の域を出ない。

 これこそ、創造力の問題か。そう思っていると、質疑応答でその点を聞かれた五十嵐氏がこう答えた。

 「クラウドとオンプレミスを連携させた新たな環境をどう活用していくかは、まさにこれから。企業規模ごとに、あるいは業務ごとに効果的な使い方があると考える。そこはぜひ創造力豊かなデベロッパーの皆さんと一緒に考えていきたい」

 もちろん、その活用法にはコストパフォーマンスが問われる。さて、どんなケーススタディが生まれてくるか。それはクラウドそのものを検証することにもなるので、大いに注目したい。

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プロフィール

まつおか・いさお ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


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