抑制、シンプル、自然さ〜『プレゼンテーションZEN』マネジャーに贈るこの一冊(2/2 ページ)

» 2009年12月13日 10時00分 公開
[堀内浩二,ITmedia]
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最後に際だつのは、プレゼンター自身

 プレゼンテーションを聞いていると、時々奇妙な錯覚に陥ることがあります。スライドに人格を感じるというか、スライドこそが“主役”で、プレゼンターはスライドを読み上げたりコメントを添える“進行係”であるかのように感じてしまうのです。

 例えば「○枚目に書いてあったのはどういうことか」という質問が受け手より飛んだとします。プレゼンターは「こういうことです」と答えるわけですが、その声が「(あそこでスライド君が言っていたのは)こういうことです」と、スライド君の代弁をしているように聞こえてしまうのです。

 決まったことを報告するプレゼンテーションもありますから、これが一概に悪いとは言いません。しかし、組織のリーダーでもあるマネジャーのプレゼンテーションの多くは、上記のようなタイプではなく、プレゼンター自身が主役であるべきものでしょう。

 本書のアプローチにしたがい、“抑制のきいた”“シンプルな”“自然な”プレゼンテーションを実施できたとして、そのとき最も際だってくるのは何か。それはプレゼンター自身です。本書は、スライドにペチャクチャと語らせず、マネジャーが自分の言葉で語るための、よい手引きになると思います。

 プレゼンテーションの主役を取り戻したとき、あなたは何を語るか。最後に著者の言葉を引用します。

 あなたのプレゼンテーションに説得力があるのは、周到な準備や理路整然とした説明のせいだけではなく、あなた自身がそのトピックに強く心を動かされているからである。自分のメッセージを完全に信じ切ることができなければ、誰もそれを信じてはくれないだろう。

『プレゼンテーションZEN』(p211)


 最近、著書について講演させていただく機会がありました。語り慣れたテーマだし、“ZEN”なデザインのスライドも用意したし……ということで余裕を持ってスタートしたのですが、なんとなくだんだん早口になって、われながらちょっと上滑りした感じで終わってしまいました。

 これまでと違っていたのは、聴衆がこれまでになく若く、本の想定読者とは違うセグメントだったこと。反応を見ながら「この話、ほんとうに伝わっているかな……」という不安がよぎってしまうと、いわゆる“フロー”状態に入れません。「自分のメッセージを信じ切る」ことができなかったのかなと、反省しています。

 でも、そんな反省も次回への励みになります。みなさんも、どうぞよきプレゼンライフを!

今週の、マネジャーに贈るこの一冊

EQ プレゼンテーションZEN

プレゼンテーションZEN

著:Garr Reynolds、訳:熊谷小百合

ピアソンエデュケーション

2009年9月7日

ISBN-10: 4894713284

ISBN-13: 978-4894713284

2415円(税込み)

従来のパワーポイント中心のプレゼンテーションに異議を唱え、聴衆と自分にとって分かり易い、「抑制」「シンプル」「自然さ」を心掛けた効果的なプレゼンテーションのための原則や概念、創造的なアイデア、実例などをバランスよく提示し、プレゼンテーションの実施やデザインに発想の転換を促す注目の1冊。


著者プロフィール:堀内浩二

 堀内浩二

株式会社アーキット代表。グロービス・マネジメント・スクール講師などを兼任。

「個が立つ社会」をキーワードに、個人の意志決定力を強化する研修・教育事業に注力している。工学修士(早稲田大学理工学研究科)取得後、外資系コンサルティング企業(現アクセンチュア)入社。シリコンバレー勤務を経験。帰国後日米合弁のベンチャー企業にて技術および事業開発を担当。2002年より現職。

著書に『クリエイティブ・チョイス』『「リスト化」仕事術』(『リストのチカラ』の文庫化)がある。「起-動線」「*ListFreak」などのサイト運営も手掛けている。

ITmedia オルタナティブ・ブログにて「発想七日!」を執筆中。


マネジャーに贈るこの一冊バックナンバー、堀内さんのブログ発想七日!も、どうぞご覧ください。


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